「後継者だからリーダーになった」という人が仕事に意義を見出す方法

仕事の意義・目的の重要さを説く事例に、イソップ寓話の「レンガ積み職人」の話が使われます。
改めて確認すると、ある旅人がレンガ積みをしている3人に「ここでいったい何をしているのか?」と尋ねることから物語が始まります。

1人は「見ての通りレンガを積んでいる。大変だ」
2人目は「大きな壁を作っている。おかげで家族を食わせることができる」
3人目は、「歴史に残る偉大な大聖堂を造っている。人々が救われるなんて素晴らしい」

と、それぞれが答えます。
人は意義や目的を持つとモチベーションが高まるということです。

非常に深い洞察を与えてくれる逸話ですが、では、実際に意義を持って仕事に取り組んでいる人がどれほどいるかというと、決して多いとは言えないと思います。
それも無理はなく「意義を抱き→仕事を始める」という人は稀です。「生活のために必須だから」「みんな働いているから」「後継者だから」といった受動的な理由で、とりあえず、あるいはやむを得ず職に就いたという人がほとんどだと思います。

僕もそうで、物心ついた時から、親から「新聞屋を継ぐんだ」と言われて育ち、24歳の時に父の急逝を機に継いだというのが真実です。
取引先の新聞社に志望動機を聞かれましたが、「活字文化の普及に貢献し、民主主義を支えるの支えないの、うにゃうにゃ…」なんて事を言ったのですが、自分でも「魂入ってねえな〜」と思ったものです。それを聞いた新聞社の社員も「はあ、そうですか」とテキトーに流していました。

最初から意義を持って仕事を始めていない人は、どうすでば良いのでしょうか?
そのヒントを、格安航空会社のPeach Aviationから学ぶことができます。同社の設立にあたり初代社長として白羽の矢が立ったのは井上慎一氏(現ANA社長)でした。
同氏は、社長就任時に格安航空会社という業態の意義を考え抜いたと言います。
その結果、次のような意義を確立します。

設立の目的は「世界平和」の実現。そのために、若いうちから世界中を旅して、たくさんの友達がいる状態を作りたい。若い人が世界中を旅をするためには格安航空会社が必要。

非常にシンプルですが心に響く意義ですよね。
同氏は、意義があり創業したのではなく、任命されてから意義を考えたのです。それは、なんとなく取ってつけたのではなく、深い自己内省により浮き彫りになった人生観と事業との接点を見出したのです。

僕の場合は、偶然の出来事から意義を見つけました。
新聞配達員の中に、新聞を配りながら安否確認をするスタッフがいました。例えば、独居老人宅の家で、前日の郵便物が抜かれていないかチェックしながら新聞を配るのです。もし抜かていない場合、家の中で倒れているかもしれません。
その配達員は、これまでに何人もの命を救っています。お客様から「本当に助かった。ありがとうございました」と感謝されている姿を見た時に、自己実現の素晴らしさを痛感し、こういうことがたくさん起きる会社にしたいと思ったのです。
その思いは、後に指示ゼロ経営として開花します。

意義は、後から見出すことができます。それをメンバーと共有することで、日々の仕事、一挙手一投足にまったく違った「色」がつきます。
仕事が自分事になることでモチベーションが高まり、豊かな創造性を発揮します。

新年度を迎えた今、自社の商いの意義について社員さんと語り合ってみてはいかがでしょうか。


※今日の記事に関心を持った方は、指示ゼロ経営マスタープログラムをご受講ください。事業への思い、意義を洗い出す機会になると思います。
「指示ゼロ経営マスタープログラム10期」