仕事は「未熟な若手」に任せよ。逆転の人事でチームを底上げする。
今、「指示ゼロ経営マスタープログラム」という公開セミナーをやっているのですが、先日、受講者の方から面白い情報を聞きました。
日本の慣習では、年長者が家督を継ぐことが多いのですが、ある企業では年少者に継がせるというのです。
これと同じような話をどこかで聞いたことがあると思い調べたら「最も社歴が浅い社員に会議の司会を任せる」という企業のことを思い出しました。
僕もその現場に立ち会ったことがありますが、本当に上手くいくのです。
社長に聞くと、年少者に任せるメリットは3つあると言います。
1、周りの社員が自立する。
2、リターンが大きい。
3、全員が成長する。
1つ1つ見ていきましょう。
❚ 周りの社員が自立する
その会社の会議を見ると、最年少が司会をやり、それをベテランが支えるという構図がありました。
これが逆だと、みんながベテランに依存する可能性があります。
どちらが上手くいくかは自明のことですね。
この様子を見た時に、僕は自分が持っていたリーダシップの常識が音を立てて崩れ落ちました。僕はそれまで「リーダシップはリーダーの能力」と捉えていたのですが、そうではなく「集団がつくり出す現象」なんですよね。
一生懸命に司会をする年少者を、ベテランがフォローするという構図からリーダーシップが立ち上がるのです。
同社では、これを伝統的に行っています。ベテランもかつて助けられた経験を持っており、若手を支援することを当然と考えているのです。
「恩送り」が持続的なリーダシップをつくり出す、とても素晴らしい風土だと感心したのです。
❚ リターンが大きい
「コンフォートゾーン」という言葉があります。不安やストレスを感じずに過ごせる安全領域を指します。仕事で言えば「目をつむってもできる仕事」ということになります。人はコンフォートゾーンを好みますが、ここに居続ける限り成長はありません。
人は「今の自分では対処できない」という状態に身を置いた時に成長します。
ということは、ベテランが司会をすることは、誰も成長しないということになります。
年少者の機会を譲ると同時に、ベテランはより難しい課題…「若手を育てること」に挑戦することで組織全体が底上げされていくというわけです。
その機会を与えるなら、できるだけ早い方が長期的なリターンが大きくなります。
「時期尚早」と言われるくらいがちょうど良いのかもしれません。
❚ 全員が成長する
若手に機会を譲り、ベテランがより難易度の高い課題に挑戦することで、もう1つ大きな効果が得られます。
「ハンカチ理論」という言葉をご存知でしょうか。ハンカチの真ん中をつまんで持ち上げれば、吊られて全体が引き上げられるように、人の集団も誰かの成長に周囲がエンパワーメントされ、引き上げられるという考え方です。
コンフォートゾーンの考え方と符号しますが、ハンカチ理論を基にすれば、仕事は、やすやすと出来る人ではなく、その仕事により最も成長する可能性が高い人に任せるのが正解ということになります。
いかがでしょうか。
「年少者に任せる」という、一見すると逆説的な仕組みは、組織の成長エンジンになり得るのです。
次の会議では試しに「司会を一番社歴が浅い人」にしてみてはいかがでしょうか。
あ、その前に今日の記事を社員さんと共有してくださいね。
その小さな一歩が、組織全体のエネルギーを変えるかもしれません。
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