好き勝手なことを言う社員を企業変革の推進力にする

先日、ある企業経営者が「社員は、リスクを負っていないのに好き勝手なことを言う」と愚痴っていました。

「好き勝手」とは、例えば、「もっと社員の給料を上げるべきだ」「採用を有利にするために休日を増やすべきだ」「忙しいから人を増やすべきだ」といった、思いつきに近い提案(?)です。
確かにいますよね、そういうことを言う社員は。

社長からすればムッとくるかもしれませんが、まずもって僕は、こうした事を口にできる風土は素晴らしいと思っています。

そして、「リスクを負っていないのに好き勝手言う」と言いますが、「リスクを負っていないから自由な発想ができる」と解釈すべきではないでしょうか。

このことは起業家に見られる傾向だと言います。
起業して成功する人には、裸一貫でリスクを負って挑戦した人というイメージがありますが、経営学者のジョセフ・ラフィーとジー・フェンの調査によると、実際は、安定した収入を持ちながら起業に挑戦した人の方が成功率が高いことが分かっています。
リスクを抱えると、気持ちが萎縮をして大胆な発想が封殺されるからだと言います。

だから、経営者はリスクを負っていない社員の意見を吸い上げた方が得だと思うのです。

このことを仕組み化しているのが岐阜にある未来工業株式会社です。
同社には「提案箱」なるものがたくさん設置されていて、会社がよくなる提案を好き勝手に行うことができます。
しかも、内容にかかわらず、提案1つにつき500円がもらえるそうです。

僕が、同社を視察したのは13年前のことなので、今でも行われているか分かりませんが、この制度により画期的な発明や改善が生まれたそうです。
また、アイデア発案のトレーニングにもなると言います。
同社は特許が多いことで知られていますが、その背景にはこうした仕組みがあるのです。

僕が経営してきた新聞店では、年に2回ほど、アイデアミーティングを開催してきました。
僕が司会をすると社員が萎縮するので、若手社員の進行のもと、アイデアを付箋に書き出します。
中には好き勝手なアイデアも出るのですが、僕は大歓迎です。なぜならば、それを有効なアイデアに昇華する方法があるからです。

その方法は、ホワイトボードに4つの四角を書き行います。
「休日を増やしたい」という例で考えてみましょう。
まず、そのアイデアに対するプラス面を書き出します。「採用がしやすくなる」「社員の私生活が充実する」などが出ると思います。
次に、マイナス面も考えます。
「営業日の残業が増える」「顧客対応が弱くなる」などといった意見が出るかもしれません。

次に、「プラス面が活きて、マイナス面が解消されるアイデア」を考えます。
どのようなアイデアがあるでしょうか。
実際にある企業では次のようなアイデアが出て、実行したら高い効果を発揮しました。
「誰でも顧客対応ができるように多能工化を行う。多能工化ができれば、仕事が溜まっている部署にヘルプに入れるので業務の効率化が実現する。そうすれば営業日にしわ寄せが行かないし、企業力が弱くなることはない」

リスクを負っていない社員のアイデアには勢いがあります。その勢いが暴走ではなく、良質なアイデアが出る方向に集中すれば、企業は自律的に良くなっていきます。

というわけで、「リスクを負っていないのに好き勝手なことを言いやがる」と思う気持ちは分かりますが、ここは「アイデアの宝箱」と考えてみてはいかがでしょうか。

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