私たちが目指すべき次世代は「蝿と江戸時代」が教えてくれる

今日の記事は「蝿と江戸時代が教えてくれる」という、なんとも奇妙なタイトルですが、最後までお読みいただけると真意をお分かりいただけると思います。

今、日本社会は様々な「社会的な病」を抱えていますが、その原因を根本にまで辿ると「希望が持てない」ということに行き着くと思います。内閣府の調査によると、日本の若者の将来に対する希望は、世界各国と比べると相当に低いことが明らかになっています。(出所:内閣府「諸外国の若者の意識に関する調査」)

失望の背景には「これ以上、経済的な富を追求しても幸福になれない」ということが明らかになったが、それに代わる世界が構想できていないことにあると考えています。

❚人口は「人口容量」で決まる

ここで蝿(ハエ)に登場してもらいましょう。
巨大なペットボトルに雄雌2匹の蝿を入れ、餌を与えると繁殖が始まります。繁殖の限度は「空間の広さ」と「空間内で調達できる食料」=「人口容量」で決まります。
人間は、空間に関しては、居住地を開拓したり高層マンションを建てたりと、文明の力で広げてきました。調達する生活剤に関しては、機械化による生産性の向上で解決し、人口容量を増やしてきました。
さらに、貨幣を発明したことにより、私たちは食料や生活剤を、現物ではなくお金として蓄え、計画的な活動ができるようになりました。
つまり、貨幣経済の規模拡大が人口容量を増やしてきたのです。

その経済はモノを大量生産・大量消費、さらには大量廃棄することで成長を続けてきましたが、すでにその発展は限界を迎えています。このことは、伸び率が鈍化傾向を続けるGDPを見ると明らかです。
人口容量が減れば、人口は増えないどころか、適正な水準にまで減るのは自然なことです。

❚人口減少期では文明から「文化」へ価値の移行が進む

貨幣には抜群の保存性があるので、富の二極分化を生みます。
蝿は食料の保存手段を持たないので、たくさん餌を投入しても、一部の強い者が独占しストックすることはありません。
しかし貨幣は無尽蔵にストックができるため、強き者に富が偏り、持つ者と持たざる者との格差が広がります。

私たちは「善い行いを積めば極楽浄土に行ける」と、未来のために準備をする思考を植え付けられています。経済の伸びしろがない上に富が偏るとなれば、まだ十分に富を築いていない若者が希望が持てなくなるのは当然のことです。
未来を創る人たちに希望がないことは、国家として由々しき大問題だと思います。

蝿の次は江戸時代中期の話に移りたいと思います。
江戸時代では、1730年頃から、およそ100年の期間にわたり人口減少が続きました。しかし、人口が減っても食料を始めとした消費財の生産性は下がりませんので、モノの供給過多が起こり、庶民でも生活剤を安く安定的に揃えることができるようになりました。
これは現代で起きていることと同じです。今から60年前の人が私たちの生活を見たらユートピアに映るはずです。
私たちがそう思えないのは希望が持てないことと、富の格差によるものだと思います。

江戸時代では、文明的な豊かさ(モノの豊かさ)の追求に限界があることに気付き、「文化的な豊かさ」(心の豊かさ)に軸足を移し、浮世や屋台文化、根付などの嗜好品、芸能などが一気に開花しました。

❚豊かになるために働くのではなく「生活そのもの」が豊か

時代劇を見ると庶民を苦しめる悪代官が描かれていますが、実際は、税(年貢)は高かったものの、社会保障的な制度や、庶民による相互扶助があり、比較的、安心して生活でき、だからこそ長きにわたる繁栄が築かれたということです。

庶民は1日に4時間ほど働き、仕事が終われば「宵越しの金は持たない」と文化活動に勤しんでいましたが、その背景には、経済的に成長し続けるというパラダイスを手放したことと、ある程度の社会保障的があったからだと思います。

この、北欧型の社会民主主義に近いあり方は、再び人口減少期に入った日本が参考にすべき方向性だと僕は考えます。

モノの欠乏を解決したいという欲求をエンジンに経済が発展するパラダイムはもう終わっています。もし、そのパラダイムを延命をするなら、心の悲鳴の音量は上がり続け、不安に覆われた社会になってしまうと危惧します。

社会のパラダイスは確実に変わり、商いは文明から「文化」へ移行します。
経営のパラダイスも変わっていくと思うのです。


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