なぜ社長のビジョンは反対されるのか?

最近「待つ」をテーマでいくつか記事を書いたところ、なかなかの反響で、みんなの関心事だということが分かりました。

「待つ」というリーダーシップ

部下が失敗から立ち直るために、アドバイスや慰めよりも重要なこと

フィードバック上手なリーダーが実践している「3つの待つ」

今日は、その続編として「伝わる土壌」というテーマで「待つ」を掘り下げたいと思います。

経営の教科書を読むと、必ず「ビジョンが大切」と書かれています。
こう言っては失礼ですが、いかにも机上の空論と感じてしまいます。分かっちゃいるけど、それが難しいんですよね。

そう思う理由は2つあって、1つは、そもそもビジョンは頭で考えてできるものではないということ。
心の奥から勝手に湧き上がる情動があり、それが開花した姿がビジョンだと思うのです。「経営にはビジョンが必要だから」という合理的な理由で作ったものは、組織の求心力にはならないのです。

もう1つの理由は、ビジョンを語る前に「伝わる土壌」が必要なのでは、と考えるからです。
経営者なら経験があると思いますが、社員との関係性ができていないと、どんな正論も、相手は受け止めてくれません。
社員にとっては「何を言うか」よりも「誰が言うか「どんな関係性の人が言うか」が重要だということ。

例えば、以前に、居酒屋で会社員組の隣に座ったのですが、そこで、ある人が「◯◯部長って、仕事の様子をジロジロ見て怖い」と言いました。それを受け、別の人は「そう?目配りしてくれていると思うんだけど」と言うのです。

同じ行為も、監視にも配慮にもなるのです。
それを分けるポイントは何でしょうか。
もちろん、部下1人を1人の捉え方もありますが、より影響があるのは「関係性」です。
丁寧に関わるという行為も、関係性ができていないと「干渉」と捉えられるし、任せるという行為も「丸投げ」と捉えられる可能性があるのです。

では、組織の土壌とは具体的に何でしょうか。僕は、それを「この人の話なら聞いてみよう」と思える関係性だと考えています。
実際、歴史を振り返ると、優れたリーダーほど、ビジョンを語る前に関係性づくりに時間をかけています。

その好例が、1990年代に深刻な経営不振に陥ったIBMを立て直した、ルイス・ガースナーです。
ガースナーが就任後に最も力を入れたことは、社員との濃密な対話だっと言います。全社員にメールを送信し、時に返信されたメールに丁寧に答えたと言います。
土壌をしっかりと築いてから再生プランを語ったということです。

ガースナーの再生プランにはリストラなど、痛みを伴う項目がありましたし、リストラ後の事業改革も業態転換とも言うべき大改革でした。
関係性ができていなければ、到底、受け入れられなかったでしょう。

そう考えると、ビジョンとは、掲げるものではなく、関係性という土壌から醸成されるものなのかもしれません。

「土壌ができるまで待つ」…これもリーダーに欠かせない「待つ」だと思うのです。
 

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