お駄賃から「おひねり」へ…経営が変わる、新しい賃金のかたち

指示ゼロ経営では、賃金が「おひねり」になることを目指します。
「おひねり」とは、芸人が、舞台が終わった時に、感謝や驚きのしるしとして観客からいただけるお金のことです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、おひねりが世の中に流通することで、社会が変わる可能性があるとさえ考えています。

それを考える上で、対置概念である「お駄賃」についても触れる必要があります。そうすることで「おひねり」の実態がよりクリアになると思います。

お駄賃は「上の者に言われた通りにやった時にもらえるお金」と定義しています。
お駄賃は、主に、トップダウンの企業で流通しています。
トップダウン組織では「決めるのはリーダー。実行は社員」という明確な役割分担に基づき仕事を進めます。同時に、できるだけ業務工程を細分化し、そこに人間を割り当てます。分業化すると、業務の難易度は下がり、教育は楽になります。
業務をしっかりとやったかどうかの評価もしやすくなり、信賞必罰の「お駄賃制度」が成り立つのです。

トップダウン組織で働く人たちは「賃金は社長にもらっている」と考えます。業務内容も仕事量も、やり方も、報酬も、すべてを決めるのは上の者だからです。
また「会社は」という言葉が頻繁に飛び交うという特徴もあります。例えば、「それは会社が決めることだ」「会社はどう思っているのか?」という具合に、自分が会社の一部ではないような発言が多い。

対し、「おひねり」は以下の様な特徴を持ちます。

◇細分化された一部分ではなく、「ひとしごと」受け持つ。分業があっても、全体の計画に参画したうえで受け持つので意思決定と実行の間の分断がない。自分(たち)で考え決め、行動できるので、仕事が愉しくなり、エンゲージメントが高まる。

◇仕事に挑戦する意欲が生まれ、成長意欲が高まる。

◇評価は、自分(たち)で行うことができるし、それを望む。

◇賃金は「顧客にもらっている」という意識を持つ。

そして、今日の記事の本題となるわけですが、ひとしごとは「贈与の文化」を醸成します。
贈与というと大げさに聞こえるかもしれませんが、私たちの日常でも起きていることです。
例えば、行きつけのレストランで、支払いをする時に、どうしても「今日も美味しかったよ」のひとことを言いたくなることがあります。
自分がテーブル席に座って食事をしていたら店が混み始めた。そんな時にカウンター席に移動する。入ったばかりの新人さんが頑張っている姿を見て、無性に応援したくなる。
お店に儲かって欲しいから、色んな人に口コミをする。
見返りがなくても相手に施したくなった経験は誰にでもあると思いますが、それが「贈与」です。

そんな時、何とも形容しがたい幸福な気持ちがこみ上げてくるのではないでしょうか。

本来、取引とは、モノやサービスとお金を交換することで完結します。
ところが、お金を支払った上に、相手に対する感謝や応援の気持ちを送るのですから、これを「おひねり」と呼ばずして何と呼ぶのでしょうか。

気持ちを受け取ったつくり手・売り手の心には、「次はもっと喜んでもらおう」という気持ちが芽生え、レベルアップします。

取引はお金を支払った時点で完了しますが、贈与は、お金を支払った時から始まり、その後も贈与が持続する可能性があります。

見返りが保証されているわけでもないのに、他者に対し感謝や応援を贈与するのは、古今東西、宗教や哲学が目指した幸福の形です。

経営の究極のかたちは、「お駄賃の経済」から「おひねりの経済」への移行かもしれません。命令と報酬の関係ではなく、感動と感謝の循環で成り立つ社会です。
と、そんな理由で「おひねり」が多く流通すれば、社会は本当の意味で豊かになると考えているのです。
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