人間に備わる「恩送り」の性質を人材育成に活かす
「今の自分があるのは、あの時の◯◯さんのおかげ」という言葉を聞いたことがあると思います。
「◯◯さん」とは上司や先輩であることが多いのですが、この言葉が聞かれる組織では、非常に人材育成がスムーズに進みます。
「自分がそうされたのだから後進にもそうしなければ」という、良い意味での義務を負い「恩送り」が起きるからです。
人を育てるのであれば、ただ教育をするだけでなく、恩が受け継がれていく文化を作ることが大切だと考えています。
どうすればそれが可能になるのでしょうか。
実は、人には、その資質が生来的に埋め込まれていると言われています。
人は、不完全な状態で産まれます。馬の出産の映像を見たことがある方もいると思いますが、生まれ落ちて数時間後には自分の足で立つことができますね。
それが人間の場合は1年もかかります。
その理由は脳の肥大化にあります。身体が完成するまで胎内にいると頭が大きくなりすぎて出産できなくなってしまうので、小さく産み、後で育てるという戦略をとったということです。
つまり、人は誰かの施しなしに生きることができないという宿命を、産まれた瞬間に刷り込まれるのです。
そして、自分も次世代にそれをしないと種を守ることができない。恩送りとは人類が身につけた、種の保存の知恵なのです。
この大原則を、組織運営に活かさない手はありません。
その要諦は「最初の施し」を発生させること=恩の起源をつくることです。
同時に「反応の見える化」を仕組み化することです。
これも人間が獲得した本能で、赤ちゃんは本人の意思とは無関係に笑顔を作る「新生児微笑」を行います。これにより、大人の愛情を引くことができるのです。新生児微笑によって、大人は、子に施すモチベーションが俄然高まるわけです。
「施したら喜ばれた」の見える化を組織に埋め込むのです。
話はビジネスから逸れますが、見える化ができていない事例として献血があります。献血は昔から提供者の少なさに苦戦していますが、その理由は、献血により救われる人のイメージが湧かないことにあると言います。
施しの効果の見える化が上手な組織と言えばユニセフです。
HPを見ると、ユニセフは「100円の施し」の意味を次のように伝えています。
「100円で救われる人がいる」
・ポリオから子どもを守るための経口ワクチン5回分
・病気にかかりにくくしてくれる栄養素ビタミンAのカプセル33錠
・1錠で4~5リットルの水をきれいにすることができる薬131錠
こうした情報が子どもたちの写真付きで紹介されています。
「恩送り」は、人類が生き延びるために身につけた叡智であり、組織の持続的な成長を支える原動力でもあります。重要なのは「最初の施し」をどう生み出し、それをどう可視化するかです。
あなたの組織でどんな方法が可能か、考えてみてはいかがでしょうか。
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