「仕事だから」を言い訳に幸福を犠牲にしない生き方を
丸亀製麺を運営するトリドールが、丸亀製麺の店長の年収を2000万円に引き上げることを発表しました。ダイナミックな賃上げで驚いたのですが、それに付随して気になる情報がありました。
それは、従業員の15歳以下の子どもは、全国の店舗を無料で利用できるというのです。これだけを聞くと良いことに思えますが、理由を聞くと引く人も多いと思います。
「子どもの食事を作る時間を働く時間にあてられる」
いかがでしょうか。
今日は、改めて「何のために働くのか?」ということを考えたいと思います。
私たちは、何かを断る際に「仕事だから」という強力なカードを持っています。
「仕事があるからPTAの役員は無理」「地域活動には参加できない」「仕事が忙しいから家族旅行は難しい」
僕もこれまで、何の疑問もなくこのカードを切ってきましたし、周りも納得してくれました。
しかし、そろそろ、私たちはこの考えを改めなければならない時期に差し掛かっていると考えています。
私たちは、仕事という土台の上に生活が成り立つと考えますが、果たしてそうなのでしょうか。
本当は「生活の一部に仕事がある」というのが正常なあり方だと思うのです。
僕が自分の常識に疑問を持ったのは、文化人類学者の深田淳太郎教授の研究に出会った事がきっかけでした。
福田さんは、ポリネシアの文化を研究する中で、彼らの「公」と「私」の概念が日本人とは違うことに気づきます。
福田さんが青年海外協力隊でポリネシアに赴任した時に、現地のカウンターパート(現地の受け入れスタッフ)が約束の時間になっても集合場所に来ないことに驚いたと言います。
その理由が「仕事がある」という、私たちが切るカードと同じなのです。「いやいや、カウンターパートがアンタの仕事だろ?」と突っ込みたくなったそうですが、よく調べると真意が観えてきました。
彼らが言う「仕事」とは、生活活動…例えば、地域の仕事や、教会の掃除、家族の行事、葬儀などを指し、ビジネスは、いわば「副業」という扱いなのです。
前者が「公」で後者は「私」という位置づけになっているのですから日本人とは真逆ですね。
この話を聞いた時に、僕は、映画「おくりびと」の原作者、青木新門さんの講演を思い出しました。
講演で、オバマ元大統領の人生観を象徴するエピソードが紹介されました。
講演の言葉をそのまま転記しますね。
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私はオバマ大統領の政治的能力などは分かりません。しかし、オバマ大統領の一つの行為には、私は非常に感動を覚えました。大統領選挙の真っ最中に、全米から6万人が集まった政治大会をキャンセルして、ハワイに住む自分を育ててくれた祖母の危篤に足を運んだわけです。日本の政治家であったら、選挙中に身内のお通夜などに行く人は一人もいません。それは政治家ばかりではありません。
(中略)
自分が大統領になれるかなれないかどうかわからない真っ最中に、自分の一人の祖母の危篤に行ったということです。すごいことであるなと感じます。そのような人物を大統領に選んだということは、アメリカの価値観が変化しているのではないかと思いました。
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冒頭に僕は「考えを改めなければならない時期に差し掛かっている」と書いた意図は、時代の変化に伴い、豊かさの定義が変わってきているからです。
研究知見も価値観の変化をバックアップします。
オーストラリアのホスピスで、長年にわたり緩和ケアに携わったブロニー・ウェア氏は、末期を迎えつつある患者がしばしば口にする後悔があるといいます。その代表的なものは次の2つだそうです。
・あんなに働かなくても良かった。
・友人関係を続けていれば良かった。
「仕事だから」のカードを切ってきた歴史がうかがえますね。
もう1つの意図は、ビジネスが顧客や社員の幸福創造をミッションにするならば、「幸福とは何か?」の問いに対するビジョンを持っていなければ、これからのビジネスを開発することは困難だということです。
よく勘違いされるので補足しますが、僕は「仕事よりプライベートを充実させよう」と言っているのではありません。そうではなく、「公」と「私」を統合させた者が幸福に生き、ビジネスも充実させるということです。「どちらが」ではなく「どちらも」ということ。
人生の目的が幸福になるのであれば、私たちは公と私を天秤にかけるのでなく、統合させた方が良いのでは?と思い今日の記事を書きましたが、みなさんはどうお考えでしょうか。
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