組織が自律的に成長する「恩送りの組織論」について。

大阪・関西万博に行った友人が「小山薫堂さんが手掛けるパビリオンがすごい」と興奮していました。
聞くと「食を通して、いのちを考える」というテーマのパビリオンで、食材のプレヒストリーなどが紹介されているそうです。
例えば、「ミツバチが一生に採れる密の量はたった5グラム」「コーヒー1杯ができるまでには140リットルが必要」といった、驚きの事実が紹介されているそうです。

自分が当たり前に享受している食材、あるいは粗末にしている食材の背景には壮大なプレヒストリーがあることを知ると、食に対する感謝の気持ちが自然と湧き上がってくると思います。
さらに、解釈を拡張すると、食に限らず、当たり前に思っているすべての物事にはプレヒストリーが存在するのです。

例えば、今、僕がブログを書いているパソコンには、それを発明した人の想いや、この事業に携わる人々、それに付帯する輸送業者など、数多くの人たちの苦労や努力があり、僕はその恩恵を享受しています。
より壮大に、素材レベルで観れば大自然からの贈り物と捉えすることができますよね。

それに気づくと「金を払ったのだから当然」という考え方は戒めなければいけないと思うのです。
本音か釣りかは分かりませんが、レストランで「いただきます」「ご馳走様でした」などと言う必要がないという主張を見たことがあります。その理由は「金を払ったのだから」ということですが、とても貧しい考え方だと思います。
聞いただけで心が荒みますよね。

買い物を単なる取り引き(サービスと金の交換)と考えれば、交換が済めば関係は精算されますので、余計な言葉は要らないとなるかもしれません。ファイナンスの語源は「ファイナル」つまり「終わり」ですから。
しかし、プレヒストリーを知った人は、交換ではなく、大自然の恩恵も含む「連綿と贈られてきたもの」という認識を持ちます。

自分が支払った対価よりも大きなものを受け取ったという自覚を持った人は、その差分を埋めたくなり、感謝の気持ちを述べたり、あるいは、他の誰かに恩恵を送る「恩送り」を行います。

こうしたあり方の方が僕は豊かだと思うのです。

この関係は売買に限りません。
自分の目の前にある「すべてのもの」ということは、部下や仲間、上司がしてくれた施しも同様です。
その成果物にも(それが成果と言えるほど大きくなくても)プレヒストリーがあるはずです。その人を支えている家族や同僚、先輩などの存在です。僕の知り合いで、祖先にまで感謝する人もいます。
受けた恩恵の差分を他の誰かに送りたいという気持ちを持った人で構成される組織は、その原理ゆえに自律的な成長モードに入ることになります。
何よりも、そんな心持ちで働くことができることは格別の幸福だと思うのです。

そのための第一歩は、恩恵のプレヒストリーを、まずは自分が想像することだと思います。
目の前のものや人を、そんな視点で見つめてみてはいかがでしょうか。
.
※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。


▷セミナー、イベント、社内研修のお知らせ

■人手不足の根本原因を解決!採用術セミナー 2025.10.22 wed.
中小企業は待遇以外の魅力で勝負すべし。不人気業種の新聞店で開発された強力なスキルです。

社内研修のご依頼はこちら
みんなで学び一気に指示ゼロ経営の文化を創る。
現在「社内研修」を2社、「研修から伴走までの完全パッケージ」は1社受け付けております

講演会を開催したい方
所要時間90分。経営計画発表会や新年決起大会の後に!
・自発的に働く意義と愉しさが体感できる。
・事例9連発!「自分たちにもできる」と行動意欲が高まる。