入社してから活躍する「伸びしろ」を持った人材を見極める

経済学に「正味現在価値」という概念があります。
将来にわたって得られる価値を勘案する考え方で、例えば、「今、100万円もらえる」と「10年後に100万円もらえる」という2つの選択肢があれば、預金金利や資産運用の可能性を考慮すれば、絶対に今もらった方が良いということになります。

同じことが採用にも当てはまります。
採用基準として、即戦力を重視する企業が増えていますが、中長期的な成長を考えれば「伸びしろ」という視点を忘れてはいけません。

しかし、将来の予測はどんな分野でも難しいもので、実際にやるとなると難しい。

どうすれば伸びしろを見極めることができるでしょうか。
それを探る上で「1つのことに没入する力」という観点が大切になります。
物事の熟達もアイデアの創出も、「1つのことに没入する時間」に比例することが分かっています。
そして、没入は動機によって支えられます。例えば、志望校合格という動機を持った人は勉強に没入できるということです。

これを採用に応用すると、何のために働くのか?…「目的」を持った人を採用することです。
そして、重要なポイントは「その目的がすぐには達成できないもの」ということです。マイカーを買うといった、すぐに達成できる動機ではモチベーションの維持は難しいですよね。

拙著「賃金が上がる!指示ゼロ経営」で事例紹介した「株式会社ザカモア」の西村拓朗社長に、採用で大切にしていることを聞いた際に、真っ先に「面接の際に、家族の話が出ない人は採用しない」と言いました。
家族の幸せは生涯にわたる重要なテーマですから、ここに価値を見出していない人はモチベーションの維持が難しいかもしれません。

僕も面接の際に、動機を掘り下げてきました。
当社は新聞店で決して憧れの職業ではありません。応募者に動機を聞くと「お金を稼ぐため」と答える人が多いんですよね。
そこで、「稼いだお金は何に使いますか?」と突っ込むと、真の動機が観えてきます。
突き詰めると2つの動機に帰結します。

1、家族のため
2、自己実現のため

いずれもすぐには成就しないテーマです。
この動機に辿りついた人で、採用して後悔した人はほとんどいません。目的を持っている人は自発的に行動しますし、成し遂げる根気を持っています。
中には、今日まで そんなことを考えたこともなかったという人もいました。
採用は、単なる選考の場ではなく、人生を見つめ直す大切な機能も持っていると言うことを知ったのです

最後にまとめます。

□物事の熟達もアイデアの創出も、「1つのことに没入する時間」に比例する。
□没入は「何のために?」…動機に支えられる。
□動機は、すぐには成就しない高度なものが最適である。

採用の本質は、今の能力を買うことではなく、「未来を共に描ける人」を見極めることにあります。
企業と応募者、双方が、共に幸せを目指す関係になっているか?…そんな視点で採用活動をブラッシュアップすることをお勧めします。

※動機の探り方をより詳しく知りたい方
指示ゼロ経営式採用術セミナーでは、3つの問いから動機を見極める術を学びます。

今回は少人数での開催になります。
そこで、オンライン受講に加え、会場受講も可能になりました。会場は米澤の自宅です(笑)
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