口出しをしないと、自発的に動くのはなぜか?

「いちいち細かな指示を出さないと動かないようでは困る」…そう思い、口出しを控えようと思っても、言わないと動かないから、つい言ってしまう…
多くのリーダーが陥る悩ましいジレンマは、どのように解消できるのでしょうか。

結論を先出しすれば、とりも直さず「口出ししない」ことですが、そのためには部下の心境を理解することが大切だと思います。

まず知るべきは、部下は「やらなきゃいけない」と責任を感じているということです。そう思っているが、心理的な抵抗があり、なかなか行動できないのです。
心理的抵抗とは、例えば、労力が増えることへの心配や失敗の恐れなどです。特に、これまでリーダーの指示で動いていた組織では、社員は「自立することへの恐れ」が行動を制限している可能性があります。
自らの意思で動いた以上、他人のせいにできなくなるのが怖いということ。

上司が口出ししてくれれば、「上司がうるさいからやった」ということにしておけますからね。
このように、行動を促すための口出しが、自立しない言い訳に使われてしまうのです。

次に、口出しをしないと部下の心境にどんな変化が起きるかを見ていきましょう。
「上司がうるさいからやる」という構図が消えると、行動の理由を失います。しかし、賃金をもらって働いている以上、何もしないわけにはいかず不安になります。
不安を解消するためには、何らかの行動を起こすしかありません。何もせずに賃金をもらい続けることなど、普通の人には苦痛ですからね。
まさに「押してダメなら引いてみる」ですね。

その行動は小さなものかもしれませんが、リーダーはしっかりと見て、部下に「よく行動したね」とサインを送ります。これが重要。

この時に、部下の心に「認知的不協和」という作用が働きます。
認知的不協和とは、自分の認知と事実との間にズレが生じた時に、そのズレを修正しようとする心理的効果を言います。

例えば、ある実証実験で、被験者の学生に、退屈極まりない作業を長時間にわたってやらせました。次に、「この後に、別の学生に同じ実験をしてもらうが、その学生に『この実験はとても面白い』と伝えて下さい」と、嘘をつくお願いをします。
被験者が嘘をつくことに承諾をした時点で、自分の認知(実験は退屈だった)と、行為(本当は退屈なのに嘘をつく)との間にズレが生じることになります。

この時に2つの条件を設定します。第1条件のグループでは、実験の報酬として20ドルを受け取ります。第2条件のグループでは1ドルだけ。

さて、実際に嘘をついたのはどちらのグループに多かったか?

結果は、安い報酬(1ドル)の第2グループの方が多かったのです。

第1グループでは、嘘をついたことを「20ドルももらったから」と言い訳しやすい。
しかし、第2グループは、たった1ドルです。
「たった1ドルのために嘘をついたの?」と思われてしまいます。

安い報酬で嘘をついたという事実は変わらないので、ズレを修正するには、動いた理由(認知)の方を「面白かった」と改変するしかありません。

上司と部下の関係に当てはめると、上司が口出しする場合は「うるさいからやった」ということにできますが、口出ししないのに自ら行動した場合は説明ができません。
そこで、ズレを修正するために、自分を「自立した人間」というセルフイメージに変えるというわけです。

今日の記事を読んで「ズルいやり方だ」と思った方もいるかもしれませんが、やることは、部下を信頼して任せ、行動したことを称賛するわけですから、いい上司が普段から行っていることです。
「徳」の高い行動は、自然と「得」を生むということではないでしょうか。
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