経営者の器は「辞める社員」への態度に現れる
経営者の人柄は、順調な時ではなく「別れの場面」にこそ表れます。
社員が退職を告げた瞬間、その人をどう扱うか?
冷たく突き放すのか、それとも感謝を込めて送り出すのか。周囲の社員は、その一挙手一投足を静かに見ています。
そして、「自分も辞めるとなったら、あんな風に扱われるのか」と思うのです。
退職は決して裏切りではありません。
違う道を歩み始めるということなので「卒業」と捉えるべきではないでしょうか。
そして、感謝の気持ちを込めた卒業式を挙げることが大切だと思います。
さて、経営者には、時として退職を迫らなければならないことがありますよね。
不正を働いたり、ルールを守れない人には厳しく対応しなければなりません。改善が見られない場合、退職勧告が必要な場合もあります。
そうしないと「何でもあり」の乱れた風土に陥る危険性があります。
あるいは、定年制度がない企業で、高齢社員に退職を勧める必要に迫られることもあると思います。
経営者の信頼は、そんな時にも試されます。
経営者からすれば「致し方ない」という事情があったとしても、社員は「そこまでしなくても」と思うケースが多いのです。
だから細心の注意が欠かせません。
僕が新聞店を3代目で継いだ当初、業界の先輩に最初に教わったことが、退職者の対応でした。
「早く自分の組織を作りたいと思っているだろうが、焦るあまり古参の扱いが雑になることがあるから気をつけろよ」
僕は、父の急逝で24歳で社長に就任しました。
社員は父が育てた、父親と同世代の人ばかり。 時間をかけて若返りをする必要がありました。
最も僕を悩ませたのは、当時67歳の番頭さんでした。
職人肌で、気に入らないと仕事をボイコットすることもありました。でも、僕のことを可愛がってくれ、僕の方針を後押ししてくれた人でもあります。
番頭が70歳になった時に、僕は彼に退職の話をしました。
伝えるのが怖かったし、彼も辛そうな顔をしていました。
退職日のことは一生、忘れません。
僕はホッとした気持ちと、寂しい気持ちが入り混じった複雑な心持ちで彼を見送りました。
花束を渡して「本当に長い間ありがとうございました。いつでも遊びに来てください」と社交辞令のような挨拶をして、彼が自分のバイクに乗った、その瞬間…
僕は、急いで靴を履き、彼の横に立っていました。
彼の姿が見えなくなるまで最敬礼で見送りたいという衝動が起きたのです。
それを見た他の社員も外に出てきて、一緒に最敬礼で見送りました。
弊社では退職する社員を大切にする文化があります。
それが組織開発の礎になっているように思っています。
退職者を同志として見送れる組織は、残る社員からも、これから出会う人からも、自然と信頼されていくのだと思います。
最後の瞬間まで誠実でありたいですね。
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