低成長経営のすすめ

「高成長と低成長のどちらが良いか?」と問われれば、多くの人が高成長と答えると思います。
しかし、国家も企業も人間も、未熟な頃は成長率が高く、成熟すると成長率は鈍化します。
高成長は未熟、低成長は成熟ということであれば、低成長は歓迎すべきことではないでしょうか。

しかし、私たちは「成長率」を盲信する傾向があります。「昨年対比110%」なんて自慢をする経営者は多いですよね。

その要因は、資本主義のシステムそのものにあります。
資本主義では「金利」が高いところにお金が集まります。高成長=金利が高い、ということで、資本主義は、その原理上、成熟を歓迎できないのです。

しかし、上場企業であれば話は別ですが、中小企業は、そんなものに翻弄される必要はありません。
率を追いかけて良いことなどありません。
人間の成長で例えるなら、成長期を過ぎたのに肉体的な成長を諦め切れず、成長期と同じ生活をするようなもの。そんなことをすれば健康を害してしまいます。

経営も同じで、成熟社会で高成長を望めば、いたる所に歪みを生みます。
例えば、無理をすれば、経営にムリ・ムラ・ムダが発生し、中長期的には痛手を被ることになります。
無理をして受注を増やせば、当然、受注量にムラが出ます。そのムラは、次工程が負うことになります。突然、入ってきた大量の仕事をさばき切れず、在庫を抱えることになります。在庫が増えるとキャッシュが減り、経営が苦しくなります。

現場は疲弊し、増員や設備増強を望む声が上がるでしょう。
しかし、無理をして増やした受注は、必ず反動で減少する時が来ます。人員と設備を増やす頃には仕事が減っていることが多いのです。

高成長を目指すと、賃上げにも影を落とします。
業績の変動が大きいと、経営者は先行きが見ない不安を抱えることになります。すると、下がった時のことを考え、業績が良い時にも賃上げを躊躇してしまいます。

では、業績に応じ賃上げを行えば良いかと言えば、それはそれで新たな問題を生みます。
賃金が上がった時に、行動経済学で言う「参照基準」が設定され、下がった時に…それが以前よりも高かったとしても、えらく損をした気分になり、モチベーションの低下を招く可能性があります。

以前に、僕が尊敬する、横田英毅(ネッツトヨタ南国 相談役)に、同社の売上高の推移を見せてもらったことがありますが、安定的に積み上げるように売上高が伸びていました。
他にも、僕の自宅から30分ほど車を走らせたところに、伊那食品工業株式会社がありますが、同社は「年輪経営」といって、樹木が年輪を重ねるような地道な成長を是とする思想を持っています。

年輪的な成長を可能にするのは、顧客からの、好感・信頼・共感から醸成された「関係性資本」の蓄積です。支持してくれる顧客がいれば無理をする必要はありませんし、顧客に尽くせば良い評判が広がり、無理なくゆっくりと成長します。

年輪的な経営は、社員のモチベーションにも好影響を及ぼします。
無理な成長のために、顧客の獲得に奔走することなく、今、自社を支持してくださるお客様に尽くすことができるので、仕事は非常にやり甲斐に溢れます。
お客様が、知り合いを紹介してくだされば、社員は、「紹介していただいた以上、恥ずかしい仕事はできない」と責任を持つことになります。
まさに、モチベーションと責任感、顧客創造が持続する経営が実現するのです。

年輪のような経営は、派手さはありませんが、嵐にも倒れにくい強さを育てます。その強さの正体は、数字では測りきれない関係性資本…つまり、人と人との信頼です。
「どれだけ伸びたか」ではなく、「どれだけ大切にしてきたか」を大切にする時代だと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
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