ドラマ「白い巨塔」を反面教師に学ぶ、組織を蝕む呪いのマネジメント

友人から「白い巨塔は組織運営の勉強になる」と言われ、今さらながらにNetflixで観ています。
山崎豊子の長編小説が原作で、1966年の映画化以来、何度も映像化されています。
僕が観ているのは、2003年に放映された唐沢寿明主演のドラマです。
これが非常に素晴らしいドラマで、人間の本質に迫る名作でした。

ドラマでは、反面教師としての学びも多くあります。
ドラマの中で起きてることと同じことが企業内で起きると、企業はあっという間に腐ってしまいます。

それは「呪いのマネジメント」です。
呪いとは、相手の思考や行動を奪うことを指しますが、まさに白い巨塔は「呪いの百貨店」といった様相なのです。

ドラマの中で、度々、贈り物の場面が出てきます。
それは、「見返りを求める贈り物」です。大学病院という巨塔で出世するためには権力者の推薦が必要で、それを取り付けるために高級品を贈る場面が何度も描かれています。

渡し方も強引です。
相手が断ると「まあまあ、そんなに固いことを言わずに、他意はないので気軽に受け取ってください」とぶち込みます。
「断る=関係の拒絶」と感じる人が多いので、相手は断り切れないんですね。

ところが、受け取ってしまうと「呪い」がかけられます。
贈り主の希望どおりの行動をしない場合、贈り主から次のような圧力がかかります。

「私はアナタに尽くした。なのにアナタは尽くしてくれない」

ここには「アナタは加害者、私は被害者」という暗黙のメッセージが込められています。
被害者というのは強いのです。
これを言われると、どうにも身動きが取れなくなり、相手の支配下に置かれてしまうのです。

好意を拒絶することは難しい。でも受けると呪いがかかる。

ドラマを観ていると気分が重くなるのも頷けるのではないでしょうか。

話は変わりますが、僕が新聞店の社長時代に、業界で「伝説の営業マン」と呼ばれた人から営業の秘訣を教わったことがあります。
その方法は、まさに「呪いの営業」です。

インターホンを鳴らして、家人がドアを開けると、身分を名乗った直後に、「これ構いませんので」と言い、挨拶品が入った手提げ袋を玄関の中に置きます。

「これ構いませんので」と言うセリフに秘訣があると言います。「差し上げます」と言うと「結構です」と断られてしまいますが、「構いません」では意味が分からないので断れないのです。

そして「私はアナタに尽くした」という基本設定が完了するのです。

「呪いの人材育成」もあります。
見返りを前提に部下に親切にするリーダーがいますね。というか、全く見返りを求めずに部下に接する人の方が稀だと思います。
問題は、部下が、リーダーが思うように活躍しなかった時の対応です。
「私はアナタに尽くした。なのにアナタは尽くしてくれない」というニュアンスが少しでも伝わると、部下は何も言えなくなります。
思考や創造性は鈍り、さらに期待に応えられなくなるという悪循環に陥るでしょう。

「呪いの子育て」は最悪です。
子どもに「どれだけアナタにお金をかけたと思っているの?」「どれだけ苦労して育てたと思っているの?」などと言うと、子どもは何も言い返すことはできません。なぜならば、一番大切な親という存在を悲しませた罪悪感に苛まれるからです。
「自分はいけないことをした」と。
罪悪感が溜まると「自分は存在してはならない」と思うほどに苦しみます。タブー中のタブーですので、絶対にやってはいけません。

「人を呪わば穴二つ」と言いますが、呪いは自分自身にもかかります。
呪いをかけるような人とは付き合いたくありませんので、徐々に距離を置かれるでしょう。

件の営業マンが活躍したのも、訪問先がたくさんある成長期だけで、成熟期に入ってからは、彼の名前を聞くことはありませんでした。

「呪いのマネジメント」は、知らず知らずのうちに組織や家庭に広がり、相手から思考と行動の自由を奪います。そして最終的には、自分自身の自由も奪います。

「白い巨塔」は呪いの重さがリアルに描かれていますので、是非、反面教師としてご覧いただくと良いと思います。
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