「一体化」と「カルト化」の違いを生むもの

企業には、メンバーの気持ちがまとまる重力=求心力が必要ですが、時としてそれが弊害を生むことがあります。
その典型は、退職者が出た時です。
退職者が出ることは、それがどんな理由であれ、リーダーにとっては辛いことで、身体の一部分を持っていかれたような痛みを伴うものです。

辞める人が出ることは仕方がないことですが、その痛みが「鋭く刺さるもの」であるならば、その痛みを受け入れる必要があると考えています。

刺さるような痛みとは「この会社に見切りをつけた」といった辞め方をした人が出た時の痛みです。
人によって痛みの表現は違うかもしれませんね。

そもそも、そのような痛みを感じるのは、自分の組織に、社員が辞めるだけの正当性があるということを認めているからです。率直に言えば「自分に否がある」ということです。

例えば、賃金水準が地域平均よりも低い企業があったとします。それでも、メンバーは「お金よりも働き甲斐を大切にしたいね」と自分たちなりの価値観で結束していました。そこに、「やっぱり、これでは生活が苦しい」という理由で辞めた仲間が出たとします。
その時に、何かしらの痛みを感じたならば、図星…「本当はもっとお金が欲しい」と思っているフシがあるということです。

その痛みは、受け入れることで自分と組織を成長させる糧になります。

逆に、痛みを受け入れない人は、「辞めた人に否があった」などと、痛みを攻撃のエネルギーに転換することがあります。相手に否があることにしなければ、自分たちの心の寄りどころを失うと恐れ、組織をあげて相手を否定するのです。

その傾向は求心力が強い組織ほど顕著であることは、辞める人を傷つける暴力団や宗教、政治団体などを見れば自明です。

このようなことを繰り返せば、組織はカルト化、村社会化し健全性を失います。しかも、そうなっていることに当の本人は気付かず、「結束が高まっている」と勘違いします。

もちろん、経営方針を変えた場合に退職者が出た場合は例外です。それに賛同しない人が去っていくのは自然なことです。大阪行きの新幹線だと思って乗っていたら、行き先が仙台に変われば降りるのは当然のことです。
あるいは、社員に、本当にやりたいことが見つかり退職するケースも同じで、祝いこそそれ、反省することではありません。
方針が定まっていれば、その後、採用活動をすれば共感する人が来てくれるでしょう。

組織は新陳代謝を繰り返しながら文化を醸成していきます。
それが「一体化」なのか「カルト化」なのかは、「痛み」の扱いによって紙一重だと考えています。


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