退職する社員の対応で、社長のその後の信頼が決まる

この時期にネットニュースを観ると「入社3日で辞めた」なんてエピソードが紹介されており、僕は興味深く読んでいます。
入社したけど価値観や条件が合わなかったということでしょうが、記事を読んでいて背筋が冷たくなるような話を思い出し、今日の記事でお伝えすることにしました。

理念や方針をつくると、既存社員の中で共感できない人が辞めていくことがあります。
退職者が出ると、社長は動揺して引き止めたくなりますが、それは絶対にしない方が良いと考えています。

これまで、特に目的地を定めず気楽に走っていたバスが、急に目的地を定め、しかも「道のりには苦労も伴うよ」ということになれば、降りる人が出るのは自然なことです。
この場合、辞めてもらった方が結局はお互いのためになるものです。

辞める人が出ても、行き先に魅力があれば、求人をすれば関心を持つ人が必ず乗ってくれます。
一時的に業務分担が増えて大変になりますが、中長期で見れば絶対に得しかありませんでので、勇気をもって対応すべきと考えます。

しかし、その時に、社長の信頼を損ねるリスクが潜んでいるので注意が必要です。
「引き止めてはいけない」と同じくらい重大なリスクです。

それは、「辞めて欲しくない人が辞めた時の対応」です。

「認知的不協和理論」の研究で、人は、自分の信念と現実が食い違う時に、信念を改めることをせず、「事実の解釈を変える」性質があることが分かっています。
例えば、終末思想を信じるカルト団体で、終末の予言日になっても何も起こらなかった時に、「教祖様が救ってくれた」というように解釈を変えるのです。
さらび、自分たちの信仰が正しいことを伝えるために、布教活動に精を出すのです。

これを、辞めて欲しくない人が辞めたケースに当てはめると次のようになります。

「この人は辞めないだろう」という思いと事実が相反した際に、「辞めた」という事実は変わらないので、「あの人は自社に共感していなかった」と解釈の方を調整します。
本当に共感していない場合は問題ないのですが、他の理由…会社として改善すべき問題があった場合でも、それに蓋をして当人に問題があったことにしてしまうのです。

辞めて欲しくない人が辞めた時のショックは非常に大きいので、その分、認知的不協和の作用も強烈に働き、当人を悪者として扱います。

辞めた社員を悪く言う社長を見たことがある人は多いと思いますが、これは、カルト信者が布教するように、自分の言動に同意を求めているのです。

しかし、リーダーの態度を見た社員は、「リーダーは、辞めた人をあんな風に扱うのか」と不満を持つようになり、組織風土は荒廃します。

特に、日本人には「リーダーたるもの人格者であるべし」という観念が強いので、それに反する態度を見た時に、裏切られたという感情が強烈に湧き上がるのです。
誰でも陥る可能性がある心理学的な作用にも関わらず、「人格的な欠損」として扱われてしまうなんて恐ろしいことですよね。

社員が辞めた時には、「心の罠」にはまる危険性が高まりますので注意が必要ですね。


※指示ゼロ経営の基礎中の基礎を学ぶ「説明会」をオンライン開催します。
まだ間に合いますよ!
詳細はこちら

※【残席8】指示ゼロ経営マスタープログラム10期 」募集中
指示ゼロ経営のすべてが学べる唯一の公開講座です。
自分たちで課題を発見し、みんなで知恵を出し、協働し解決する『プロジェクトマネジメント』の全容を学びます。
詳細はこちら