人は「ひとしごと」任せられた時に仕事が大好きになる。
僕は、社会人になりたての頃、上司から「主体性やヤル気は自分でつくり出せ!」と言われて育ちましたが、その後、社長の立場になった時に、これらを部下任せにしてはいけないことを知りました。
というのも、これらのものは、本人の資質もさることながら、環境に依存するところが大きいからです。
実は、この分野の研究は歴史が古く、1976年に、J・リチャード・ハックマンとグレッグ・R・オルダムという学者が「職務特性モデル」という知見で整理しています。
簡単に言うと、人は「面白い仕事」に夢中になるということです。
面白い仕事とは、次の5つの要件を満たす仕事です。
「技能多様性」「タスク完結性」「自律性」「フィードバック」「タスク重要性」
言葉が難しいので簡易にすると…
「いろいろ」「ひとしごと」「自分で決める」「手応え」「誇り」
ということになります。
「いろいろ」とは、例えば、ネジをしめるだけでなく組み立ても行うといった多様性がある仕事です。
「ひとしごと」とは完成品を作ったり、企画から販売までといったプロセス全体を担当することを指します。例えば、あるブティックでは、社員に仕入れから販売まで「ひとしごと」任せています。
社員は「この服は、あのお客様に似合うだろうな」と想像をしながら仕入れるので、確実に売れ、在庫リスクが減るといいます。
「ひとしごと」には、必然的に「自分で決める」という要件がついてきます。
「ひとしごと」の対置概念は「分業」ですが、分業体制では、工程の一部分にしか携わらないので、生産物を「自分が作った」と感じることができません。
よって、成果が出ても喜びは限定的です。
これが「ひとしごと」の場合、受け取る「手応え」は格別です。
喜びが格別である一方で、ネガティブな結果も真摯に受け止めます。だからこそ仕事への誇りを持つことができるわけです。
こうして整理すると、「ひとしごと」任せることで全ての要件が整うことになります。
SONYが初期ウォークマンを作っていた、神奈川県の厚木工場では、1人あるいは数人の人間が、ひとつの製品を造り上げる「セル生産方式」が採用されていましたが、これがまさに「ひとしごと」で、ワーカーたちは、誇りと喜びと責任感をもってものづくりに励んでいたと言います。
1人で「ひとしごと」を行ってもエンゲージメントは高まりますが、複数の人間でひとしごとを行えば、メンバーから必要とされる「居場所感」が得られます。
これも格別の喜びですね。
エンゲージメントは環境に依存するところが大きく、その鍵となるのが「ひとしごと」です。
勿論、100%の工程を任せることは難しいと思いますが、「これは自分の仕事」と胸を張れる単位で任せてみてはいかがでしょうか。
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