理念とは唱えるものではなく使うもの

❚ 理念の実践が「らしさ」」を生む。

経営者が語る理念、パーパス、社是といったものを、はたしてどれだけの社員が自分事として捉えているでしょうか。
社員さんに聞くと、「一応知ってはいるが、知っているだけ。毎日、目の前の課題でいっぱいいっぱい」という声が多く、お飾りになっている企業が多いのが現実だと思います。

しかし、理念や社是といったものは、日々の仕事をする上での重要な判断軸ですので、理解していないと自律的な働き方はできません。
また、その会社の「らしさ」の源ですので、体現できていないと独自性が低下します。

社是が完璧に共有された(されていた?)企業といえばGoogleです。
Googleは創業時に「Don’t be evil(邪悪になるな)」という社是をつくりました。

この社是が、いかに社員に共有されていたかを物語る有名なエピソードがあります。
同社が、アメリカ国防総省との共同プロジェクトで、軍事用ドローンの画像認識に協力したことに対し、社内で抗議行動が広がり、従業員4600人が協力中止を求める嘆願書に署名。抗議のために辞職する人も続出したといいます。

いかにもカウンターカルチャーの発祥地で生まれた企業といった感性だと思います。

❚ 「行動のその先に何が起きる?」を問い続ける。

理念が浸透しないのは、社員の意識が低いからではありません。
理念と目の前の仕事が結び付いていないからです。だからこそ、理念を実務の判断に接続する工夫が必要になるのです。

では具体的にどうすれば良いのでしょうか。
それに成功した企業のほぼ全てが「具体と抽象の接続」という方法をとっています。
社員が日々、取り組んでいる業務(具体)と、理念、パーパス、社是(抽象)を結ぶための思考訓練です。

僕が経営してきた新聞の事例が分かりやすいと思いますので紹介しますね。
当社には「2万色で描く未来」というスローガンがあります。
地域におよそ2万人が暮らしており、1人1人の個性で素晴らしい地域を創ろうという思いを込めミッションとしました。

当社では、このミッションが意思決定の軸になっています。
例えば、地域の人を講師に招くイベントを通年で行っていますが、最初にこのアイデアが出た時に、ミッションとの整合性を確認する「ある問い」を重ねました。

その問いとは…

「その先に何が起きる?」

というものです。

「地域の人を講師に招くイベントを行うと、その先に、どんなことが起きるか?」と問い続け、最終的に「2万色で描く未来」につながればOKということです。

逆に、どれだけ儲かろうとも、つながらないアイデアは却下します。
以前に、大手宅配会社から業務提携のオファーがあり、とても好条件だったので心が動きましたが、どうこじつけても「2万色で描く未来」に繋がらないのでお断りしました。

こじつけようとする時点でかなり危ういですがね 笑。

今、顧客に選ばれる企業は、独自の「らしさ」を持っています。
そんな企業は、理念・パーパス・社是などを、額に入れた飾り物にせずに実務判断のツールとして活用しています。

理念とは、社員一人ひとりが、自ら考え判断、行動した時に初めて輪郭を描きます。
理念を額から外し、現場に持ち込むこと。…唱えることよりも使うことで輪郭が浮かび上がってくるものだと考えています。
 

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