「リモートワークを廃止したら会社が良くなった」のはなぜ?

何の目的も持たない「非公式な対話」が人と組織の育成には欠かせないと考えています。
要するに「雑談」のことですが、雑談には形式的な場では出ない、すばらしい学びや、創発が起きる可能性があります。
(創発とは、ワイワイガヤガヤの中から、思いがけず面白いアイデアが出ること)

こうした理由から、コロナ禍で盛り上がったリモートワークが下火になっています。
リモートワークの立役者であるZoom社が、2023年に、社員に対し、少なくとも週に2日はオフィス勤務を命じたことが話題になりましたね。

この報道を聞き、「週に2日」というのが絶妙だと思いました。
というもの、リモートワークとオフィス勤務の「良いとこ取り」の意図を感じるからです。

リモートワークには、通勤時間の節約、プライベートの充実、集中力の向上などのメリットがあります。
一方で、雑談が著しく減るというデメリットがあります。
雑談は、たまたますれ違ったとか、喫煙所で一緒になったといった非公式な場が必要です。
この話をすると「オンラインだって、ブレイクアウトルームを作れば良いじゃん」という人がいますが「用意されたもの」では効果は限定的でしょう。

非公式な対話が人材育成に有効だということを明らかにしたのは、ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーという人類学者です。
彼らは、背広の仕立屋での徒弟制度の観察から、偶然に起きる様々な出来事の中に有効な学びがあることを発見し「正統的周辺参加」と名付けました。
周辺参加とは、掃除や道具の整備など、いわゆる「下積み」のことです。師匠の周辺作業に参画する中で色んな出来事を体験し、その過程で師匠の考え方や思想を体験的に学ぶというわけです。

偶発性は、教育だけではなくアイデア創出にも有効です。

Google社もリモートワークを廃止した企業の1つです。
Google社には伝統的に「20%ルール」といって、勤務時間の20%を、通常業務以外のどんなことにも自由に使える制度があります。
きっと、この時間を使い、色んなことを考えたり試したりするうちに、仲間が「何やっているの?」なんて話しかけ、会話をしているうちに化学反応が起きたことでしょう。
GmailやGoogle Mapsなど、秀逸なサービスがこの時間で生まれたと言いますが、これも「非公式な場」の効果と考えることができます。

このように、便利だと思って導入したが、リモートワークだけでは偶発的な学びが起きないことに気づいた企業がオフィス勤務を復活させたということです。

「うちは元々リモートワークはやっていないから関係ない」という方もいると思いますが、話の要点はリモートワークの是非ではなく「非公式な場」の有無です。

私語を禁止したり、会議に上司の許可が必要だったり、自由が制限されている企業もありますが、それでは偶発の産物は降りてきません。

自分たちの組織に「偶然が起きる場」があるか?…それを問い直すことが、これからの人材育成と組織づくりの出発点になるのではないでしょうか。

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