測りすぎると組織はバカになる

数値管理、KPIは生産性を高めるとされていますが、やり方を間違えると、かえって生産性を低下させることがあります。

例えば、通販の世界で「お試しセット」を最初の購買ステップに設定している会社がありますね。
お試しセットの購入→電話やメールで本購入を促す→メルマガやSNSでつながりリピートを促す、といった販売プロセスが一般的です。

これらのプロセスを分業化している企業では、社員を目の前の仕事に集中させるために、KPI=経営管理指標を設けています。
例えば、お試しセットの従事者に対しては「広告費用に対し何件の申込みがあったか?」といった指標を与え、その達成度を人事評価に反映させます。

すると、従事者は、とにかくお試しセットの申し込みを増やすことばかり考え、その後の本購入のことが蔑ろになります。
自明の結果ですよね。

よく「お試しセットをお申し込みいただいた方に、抽選で高級牛肉をプレゼントします」といったキャンペーンを打つ会社がありますね。
僕も通販事業の経験があるので分かりますが、あれをやるとお試しセットの申し込みは増えるのですが、申し込み者は、商品ではなく高級牛肉に興味がある人ばかりで、本購入に進まないのです。

そんな人の顧客リストが増えても管理が大変になるだけですし、ダイレクトメールを郵送したりしたら、それこそ多大な費用をドブに捨てることになります。

このようなKPI管理による弊害を、経営学では「測定執着」と呼んでいます。
興味がある方は、ジェリー・ミュラーの 『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか』という本が参考になりますのでごお読みただくと良いと思います。

今、僕は、木村拓哉さん主演の医療ドラマ「A LIFE 〜愛しき人〜」を観ていますが、大病院を舞台に「測定執着」が描かれています。
外科医のKPIを「手術の成功率」とする病院では、難しい手術をしなくなるという不条理が起きる可能性がある、というか、現実として起きています。

このように目先のことしか見えなくなることを「部分最適」と言いますが、分業化は、部分最適に陥る最たる原因です。

大企業ならしかたがないと思いますが、中小企業でKPIを処遇に反映させるのはやめた方が良いと考えています。

同時に、分業化のあり方を見直すことも重要です。
分業化は「計画立案者と実行者の分断」が起こります。部下は、計画立案に参画しておらず、自分に割り当てられた業務しか見れなくなります。

部分最適を回避するためには、メンバーに計画段階から参画してもらい、その後、各自に役割を割り当てるというプロセスを踏むことが効果的です。
社員数が多い場合は各部署の代表者で行うことも良いですし、100人くらいであれば、テクニックを使えば全員参加で行うことができます。その方法に関しては別の機会に記事にしたいと思います。

計画立案に参画することで、メンバーは「木も見て森も観る」ことができるようになります。

このように、最終的には分業したとしても、全体計画に参画することと、KPIを処遇に反映させないことで、測定執着は防ぐことができると考えています。

目の前の数字にとらわれず、全体を見渡す視点を持つこと。分業であっても、全員が物語の登場人物であるという意識を育てることが、生産性向上の鍵を握ると思います。
 
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