「3億の壁」と社長の器の不思議な関係
よく「会社は社長の器以上に大きくならない」と言いますよね。
僕が24歳で新聞店の社長に就任した際に、業界の先輩から受けた最初のアドバイスがこれでした。
しかし、言いたいことは何となく分かるのですが「器」というものの正体が不明瞭で、何を心がければ良いか分からず悩みました。
器とは何でしょうか?
先日、器について「自分が完全ではないことを知っており、他者の言葉に耳を傾けることができる人」という記事を書きました。
「会社は社長の器以上に大きくならない」を科学する。
器には様々な解釈があると思いますが、今日の記事では「信頼力」という要件について考えたいと思います。
信頼力とは「他者を信頼する力」を指しますが、これが組織成長の、ある段階で決定的に必要になるのです。
よく「自分の腕を信じて起業した」という人がいますよね。そういう人は、自信があるだけあって起業に成功するのですが、その後「3億の壁」にぶつかります。どういうわけか、売上高が3億円に届きそうな時期に成長が止まってしまうのです。
原因を様々な専門家が考察し、多くが「仕組み化」の欠如を指摘しています。
例えば、これまでは社長の天才的なセンスで営業をしてきたが、社員はそれができない。そこで営業プロセスを標準化する必要性に迫られますが、才能のある社長はこれが苦手なんですよね。
非常に鋭い指摘ですが、これは器というよりは技術の問題です。
実は、3億の壁の真相には、リーダーの器…「信頼力」が影響しています。
統計によると、社員1人あたりの売上高の全業種の中央値は約3,800万円と言われています。ここから逆算すると、年商3億円の会社には、おおよそ8名の社員が在籍する計算になります。
この「8」という数字が、ある研究知見と符号するのです。
経営学に「スパンオブコントロール」という、マネージャーが直接管理できる部下の人数を指す経営用語があります。
それによると、業種や状況にもよりますが、およそ8人が限界と言われています。
この人数を超えると、直接的な管理ができなくなるので、中間管理職を置くなどの組織化が求められます。
ここで信頼力が問われるのです。
任せるという事は、自分1人ではできない事を依頼するわけですから非常に勇気が要ります。これまでの「すべては自分次第」という主導権を手放すわけです。任せた部下が自分に背く可能性さってある。
その恐れがあるから、人事権を握りコントロールするわけですが、それは同時に「不信頼の暗黙メッセージ」として相手の無意識に届きます。
すると、関係が駆け引きの性質を帯びるようになり、部下は思い切り能力を開放しなくなります。
信頼力がないリーダーは中間管理職を育てることができず、3億の壁を超えることができないということです。
では、どうすれば良いのでしょうか。
信頼力は、これまでの人間関係により醸し出された人間観の集大成です。他人にひどく裏切られた経験があれば、自己防衛から不信頼の人間観を持つのは自然なことです。
人間観はそう簡単に変わるものではありません。
それなのに、いたずらに規模を追うならば、不信頼を基にしたマネジメントを強化しなければならず、企業風土は規模の拡大とともに荒むばかりでしょう。
企業は規模だけが価値ではありません。企業のミッションが幸福の創造であるならば、自分の人間観に合った経営をするという選択肢も良しと考えます。
小さくても価値ある企業はたくさんあります。
皆さんはいかがお考えでしょうか。
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