「すぐに成果を求める」が未来を潰す…「損して得取れ」を経営に実装する方法
民主的とは「民が主人」ですので、主人が馬鹿では成り立たたない制度です。
民主主義が高度に機能している北欧では、国民は情報リテラシーが高く、情報を有料で購入する習慣が根付いているそうです。税金も高いが、優れた見識を身につけ、政府を厳しい目でチェックするということです。
日本人はどうでしょうか。
経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」によると「企業は人に投資せず、個人も学ばない」とバッサリと斬られています。
経営者は、社員の主体性を尊重する民主的な経営を目指すなら、社員教育は絶対に欠かせません。
しかも、知識の習得だけでなく、文化的に高度な教育が求められると思うのです。
ところが、企業は「早く簡単に」身につくノウハウが好きで、大切な教育がおろそかにしがちです。
明仁上皇の教育担当を務めた小泉信三は、世界のグローバル化に伴い、産業界からの「すぐに役立つ人材を育てて欲しい」という要請に対し「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」と反論しています。
簡単に身につくことは競争力にはなりません。
ビジネスでの競争力の源泉は「創造性」と「顧客との関係性」…つまり、顧客が唸るような良い商品、サービスを作ることができ、それを勧めれば確実に買ってくれる顧客がいるということです。
両者ともに、人にまつわるものです。
だから、人に精通する必要があるわけです。世界中で哲学を学ぶビジネスパーソンが増えていることからも、その重要性をうかがい知ることができますね。
創造性の育成にも、顧客との関係性構築にも時間がかかります。
醸成されるまでは投資が続き、後になってようやく回収できる。まさに「損して得取れ」です。
ところが、私たちは「損して得取れ」が苦手です。
目の前に美味しいものを提示されると、つい飛びついてしまうんですよね。
「1週間後に1万円もらえる」と「6ヶ月後に1万1千円もらえる」という2つの選択肢を提示すると、後者の方が得にも関わらず、前者を選ぶ人が多いことが行動経済学の実証実験で明らかになっています。
「損して得取れ」という考え方は、経営の古典では「先義後利」(義を優先することで後から利が生まれるというという思想)と呼ばれています。
先義後利を実装するためには、人材育成とともに、各種制度も変える必要があります。特に、「アメとムチ」の人事制度を改めなければなりません。
数々の心理学の実証実験により、目先の利益や罰…アメとムチで相手を釣ると、思考が短絡化し、創造性が破壊されるということが分かっています。
そんな仕事をしていたら、顧客との関係性も破壊されてしまいますしね。
※この件に関してはこちらの記事を参考にしてください!
「社員のヤル気を刺激するために導入された賃金制度が上手く行かないワケ」
民主主義も経営も、最後は「人の質」に行き着きます。
「人に投資する」という営みは、未来に花を咲かせるための土づくりのようなものです。
「急がば回れ」の精神で、じっくり取り組む必要があると考えるのです。
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