社員からの新企画の提案でコロナ禍を乗り切った

大阪市に、名和株式会社(名和史紘社長)という、劇団やテーマパーク、プロ球団チアの特注コスチューム、アスリートや女性用のスポーツウェアを企画製造しているメーカーがあります。社員数は34名。5つの部署があり、社長は②のスタイル(上司はチームの外にいて関わる)をとっています。

2017年に社長交代したのを機に指示ゼロ経営に取り組み、確実にチームが成⻑しています。
2020年、コロナ禍に入り、みんなが集まってのスポーツやイベントができなくなり、既存事業の受注がゼロになりました。

名和社長は、パンデミックが長期化することを予想し、資金繰りに走りました。正しい判断です。しかし、先行きが全く見えない状況で、非常に大きな不安を抱えていました。

そんなある日、社員さんから突然の呼び出しがありました。「社長、サンプル作ってみたから見て。」と言うのです。訊くと、「みんなマスクがなくて困ってるやんか。うちの生地で作って、皆さんが買いやすい値段で製造してみたいねん。」とのこと。
社長が資金繰りで奔走している間に、社員さんが自発的にミーティングを開き、このアイデアが出たそうです。
同社には優秀なデザイナーがいますし、長年使っていた質の高い素材があります。ただのマスクではなく、小顔効果、保湿効果、着け心地がいい、柄がユニーク、など様々なマスクを発案し、2020年4月には販売を開始しました。

この時期は、マスクが品薄になり、インターネット上で高額で取引されていました。政府がマスクの配布を始めましたが、スムーズに配布できず、混乱していた時期でした。そんな中で、どこよりも早い対応をした同社を、多くのメディアが取り上げました。
結果的に、パンデミック発生から約1年間で、10万枚以上を販売しました。トップダウンで物事を決めていたら、このようなスピード感も、斬新なアイデアも生まれなかったでしょう。

成功体験を得ると、チームは、さらに自律的に行動するようになります。2022年5月には、女性社員さんを中心としたプロジェクトチームが、女性特有の健康課題を解決するためのフェムテックブランド「Kwom」を立ち上げました。
持続可能なモチベーションの『再生産システム』が完全に稼働したと言えるでしょう。

同社は、名和史紘さんが、2代目として社長に就任してから、根気よく指示ゼロ経営に取り組んできました。取り組みの一環として、毎年、決算報告会を開催しています。参加は任意です。先代の社長は、決算の数字は、絶対に他人に見せない人でした。そのためか、社員さんの関心は浅く、初年度は1人しか参加してくれなかったと言います。
しかし、名和社長は、その1人に真剣に向き合いました。翌年は、その1人が仲間を誘って参加者は数名になりました。さらに3年後には、ほぼ全員が参加してくれるようになりました。
名和社長は、就任時に、1人で背負い込んでいたものを1つずつ降ろし、社員さんと共創する経営を地道に進められています。

(拙著、「賃金が上がる!指示ゼロ経営」より抜粋、編集)

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