人口減少、成熟社会では、それに合った賃金制度を整備すべし

成果主義が失敗に終わった理由は「部分最適」に陥ったから

バブルが崩壊した直後、アメリカ型の経営が注目されるようになりました。
その中でも多くの企業が成果主義賃金制度を導入しました。
そして失敗しました。僕も失敗しました…
成果主義は限られた賃金の原資を、やった人とそうでない人に傾斜配分する仕組みです。
「社内に競争原理が働き、みんなががんばるだろう」…そう考えたのですが、上手くいきませんでした。
その理由は仲間同士が敵になってしまったからです。
自分がより多くもらうためには他人(仲間)よりも良い評価が必要です。なので切磋琢磨するのではなく「自分だけがのし上がる」という発想に陥ります。
自分が上がらなくても仲間が下がれば良いとなる…
助け合いや創発(ワイガヤ)が起きず、組織は活力を失ってしまいました。

痛い話ですが、これが弊社が成果主義で失敗した理由です。

今は活動量が成果に比例する時代ではありません。知恵、創造性、アイデアが求められます。
本格的な人口減少社会、成熟社会を迎えました。
モノを効率よく生産し市場に流す発想では立ち行かなくなっています。
人が心で感じる「価値」を創造することが求められる。

同時に、みんなで助け合い全体の仕事をキレイに流すことが求められます。
仕事が溜まっている人を助けると、詰まりが解消され最終的な成果物が増えるわけです。
その方が全員にとって得なことなのに成果主義はそれを邪魔します。

「部分最適ではなく全体最適」の視点が重要。

賃金は魅力的であるがゆえに、取扱には注意が必要だと思います。
一部のパフォーマーには魅力的、でも平均的な社員にとっては過酷な制度では組織の力は削がれてしまいます。

評価にも注意が必要だと考えます。
高評価を受けた社員は良いのですが、低評価を受けた社員は、事実上「罰を受けたからチャラ」と解釈して向上心を捨てる危険性があります。

部分最適になる要因を全て廃止し、協働が起きる制度に変える

僕が成果主義で気付いたこと、反省したことは「個別評価は全体最適を破壊する」ということです。
自分だけが頑張れば自分の賃金が増えるという制度がある以上、人は自分のことを最優先に考えますからね。
では「仲間を助けたか?という評価基準を作ればどうか?」と思いがちですが、助けられた人は、助けてくれた人の評価が上がるので快く支援を受けないということも起きます。

僕は、悩み抜いた末に「部分最適になる評価は全て廃止する」という結論に至りました。
まず廃止したのはインセンティブです。契約を1件獲れば1万円といった成功報酬です。
インセンティブがある以上、社員は自分のそれを増やすことに意識が向きますから。

そして評価で賃金(賞与)が決まる仕組みも廃止しました。
理由はインセンティブと同じです。

社員が自分の事だけしか考えられなくなると、会社全体の収益に無関心になります。
個別評価はデキる社員には魅力的ですが、会社全体の稼ぐ力を低下させる危険性があります。
一部の社員の賃金だけが増え、会社もその他の社員も一向に儲からない…短期的には良いのですが中長期的には「誰も得しない」と気付いたのです。

そこで、全員の賃金を全体の業績に連動させる仕組みに変えました。
少し考えれば、道理で考えれば、それが全員にとって得なことだと解るので、みんなが賛同してくれました。
賛同の理由はもう1つあります。
そもそも人は協働の生き物で、それ自体に快を覚えます。社員はお金だけでなく働きがい、働く悦びにも関心があるのです。

全員で協働するメリットは大きかったです。
1、ワイガヤの会議が増え、素晴らしいアイデアが出るようになった
2、仕事が溜まっている仲間を助けるようになり、仕事が流れ最終成果が増大した
3、変な緊張、ストレスが少なくなった(上司のストレスも)
4、サボっている仲間を、仲間が注意するようになった

日本は世界に類例を見ない、人口減少社会と成熟社会を同時に迎えています。
従来、正しいとされていた常識が非常識になる、そんな時代だと考えています。
キーワードは「全体最適」です!

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。

 


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