人間関係を「貸し借り」で捉える組織の脆弱性について考える
「借りを作った」「借りを返す」という言葉があるように、私たちは、人間関係を「貸し借り」の構造で捉えることがあります。
これは、いわば「恩のバランスシート」で、常に均衡を保たないと成り立ちません、まさに人間関係を「取引」と捉えていることがうかがえますね。
僕が社長を勤めた新聞販売店は、もうすぐ創業100年になります。それだけ長く地域で商売をしていると、地元とのお付き合い、特にお義理が増えます。
社長を引退した今でも、年間に20件ほどの葬儀に出ていますが、故人の中には、まったく知らない人もいます。
そのようなことが起きるのは「以前に香典をもらっているから」という理由で返すからです。そして、相手も同じことをするから、延々と香典の返し合いが続くのです。
ここでのポイントは、香典の「与え合い」ではなく「返し合い」という関係性ということです。
返さないと、相手から非難される、その恐れで駆動する関係性です。
この関係性は、村社会において規範を守ることを目的にする場合には効果を発揮しますが、創造性は期待できません。
返して安心という心境になるだけで、何かを生み出したり、何かが増えることはありません。
以前に、ある経営者が、「私は常に社員の見本となるように心がけている」と言っていましたが、その目には輝きはありませんでした。
なぜなら、その意図が「私が先に頑張るから、君たちも返せよ」という功利的な意図でやっているからです。
この意図は社員に伝わります。
社員は、しかたがなく頑張るようになりますが、そこにはイキイキとしたエネルギーはありません。
それでも、作業の積み重ねで何とかなる仕事であれば効果はありますが、創造性の要る仕事では弊害しかありません。
これがもし、見返りではなく、純粋に愉しんでやっていたらどうでしょうか。
愉しさには他者を巻き込むエネルギーがあります。部下の中から賛同者が1人現れて、今度はその人の姿に刺激を受けた2人目が動き出し、やがて大きなムーブメントに発展する可能性があります。
以前に、イエローハットの早朝掃除に参加したことがあります。
朝、7時くらいには社員さんが街に繰り出し、熱心に掃除をしており本当に驚きました。その日は幸運にも創業者の鍵山秀三郎さんの近くで掃除をすることができました。
鍵山さん、朝一番にタバコの吸がらだらけの道を見るなり、嬉しそうにこうおっしゃいました。
「うわ〜、今日もすごい吸いがらだな〜」
鍵山さんは、掃除を純粋に愉しんでいるのだと思ったのです。だから社内に広がるのだと実感したのです。
見返りは「私とあなた」の閉じた関係なのに対し、愉しみは「私からあなたへ。あなたから誰かへ」という連鎖を生む開放性があります。
職場に開放的な関係が築かれると、ある人の行動が、その人の周りにいる複数の人にエネルギーを供給し、全体が活性化する効果があります。
供給は、組織の縦横を問わず縦横無尽に行われますし、時間的にも持続します。
だから組織が良くなるのだと思います。
今日の記事は、是非、職場の皆さんみんなで共有していただき「開放的な関係性」をつくりキッカケにしていただければ幸いです。
.
※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。






