人への投資が何よりも優先するワケ
先日、ある経営者と「お金の使い方で稼ぎが変わる」という話で盛り上がりました。
お金の使い方には「変動費」と「固定費」があります。
その社長と議論したのは固定費に関してです。
固定費の中でも、未来の稼ぎを作る「戦略費」の使い方に知恵が要るよねという話です。
戦略費は大きく分けて次の3つがあります。
「研究開発費用」…より良い商品やサービスを開発するための費用
「マーケティン費用」…より巧みに販売するための費用
「人的費用」…人材育成や、人が創造的に働ける環境づくりのための費用
これらにお金や時間を投入せずに、日常業務を回すことや無駄なことに偏ると企業はダメになります。
戦略費の難しいところは、失敗の可能性が結構あるということです。
研究開発ではアイデアの創出が成功の鍵を握ります。以前は市場調査をもとに開発すれば間違いなかったのですが、その結果、どのメーカーの製品も似たりよったりになってしまいました。
これからは、予定調和では到達しない独創性が鍵を握ります。
マーケティングも同じです。
以前は、「よりスペックの高い商品がありますよ」と伝えることで売ることができました。
「より大きな画面」「より高い解像度」「より大きな排気量」「より速く」…スペックの優位性を伝えることで売れたのですが、今はそうじゃない。
マーケティングも予定調和で進めることができず、常に失敗リスクを抱えながら挑戦することになります。
研究開発やマーケティングの成功確率を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。
鍵を握るのは、もう1つの戦略費「人的費用」です。
創造性は人間の領域なので、人間の創造性が高まることへの投資は、他の2つに優先すると考えます。
人的費用というと賃上げを連想する人がいますが、賃上げをしても効果がないことは、これまでの研究から明らかにされています。
「魚を与えるのではなく、釣り方を教えなさい」という格言の通り、富を創れる人や組織になることに使うことが大切ではないでしょうか。
ゲーリー・ベッカーという経済学者は、人に対する投資が最も長期的なリターンをもたらすことを数多くの企業研究から明らかにしました。また、2023年度から上場企業には、人材育成やエンゲージメントといった人的資本情報記載が義務づけられたことからも、その重要性をうかがい知ることができます。
ところが現実はどうでしょうか。
経済産業省が公表した「未来人材ビジョン」のレポートによると「日本企業は人に投資せず、個人も学ばない」とバッサリ斬られています。
では、何に投資しているかという、これが「設備」なんですね。レポートでは「投資家が、中長期的な投資において最も重視すべきものは『人材投資』であるにも関わらず、企業側の認識とギャップがある」とまとめています。
時代の変化に思考が追いつていないことが露呈してしまいました。
人的費用は何も、スキルや知識を学ぶための研修だけではありません。
「創造性が高まる」ことを目標にすれば、それが発芽する土壌への投資も人的費用に含めるべきだと思います。
・健全な風土づくり
・ビジョンづくり
・自律性を高める「任せる仕組み」
設備などは、導入した瞬間から効果が出ますが、人への投資は効果が出るまでにタイムラグが発生します。つい、短期的な利益に目を奪われがちですが、将来生み出す価値=いわゆる「正味現在価値」を観る視点が繁栄の鍵を握ると考えるのです。
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