その苦労、報われないかも?…努力よりも大切な“ポジショニング”の設定
「石の上にも三年」とは、どんなに辛くても、我慢強く耐えていれば、いつかは必ず成功するという意味ですが、僕は「本当に、その石に座り続けても大丈夫か?」という疑いを持つようにしています。
というのも、そもそも課題設定が間違っていたために、努力を水泡に帰してしまった経験があるからです。
僕は1995年に新聞店の経営を始めたのですが、この年はWindows95が発売され、インターネット時代が本格的に幕開けした年です。
新聞市場はこの頃をピークに、ずっと下がり続けています。衰退の原因は言うまでもなく「ビジネスモデルの賞味期限切れ」ですが、当時、業界をあげて取り組んでいたことは「営業の改善」でした。
つまり、課題設定が根本から間違っていたのです。
当然、努力は報われません。
幸い、僕は「座っている石が違うのではないか?」と真の課題に気づいたので業態展開に着手することができましたが、多くの新聞店は課題を更新することなく苦境に立たされることになります。
ビジネス成功の最大要因は「成長市場の中に、自社独自のポジションを見つけること」です。
当社の場合、地域創生の流れの中に、当社にしかできないビジネス領域を見出したのです。
具体的には、指示ゼロ経営のノウハウを地域づくりに展開し、行政からその分野に関する委託管理を受注したのです。
新聞店は折込チラシを入れ放題なので、手作り新聞を作れば、地域づくりの活動報告が好きなだけできますし、イベントを開催すれば集客がしやすいのです。
このように、自社が持つリソース…知識、ノウハウ、機能などものを洗い出し、成長市場に応用することで、新たなビジネスを創造することができるのです。
もし、僕が「石」をノウハウではなく新聞事業と定義していたら、大変なことになっていたことでしょう。
スケールが大きな事例では富士フィルムが好例です。
ご存知の通り、同社はカメラのデジタル化に伴い、フィルム事業から積極的撤退をしましたね。
そして、フィルム製造のリソースを、成長分野である「アンチエイジング」に振り替えたのです。
同社のHPにはそのことが簡潔に説明されています。
フィルムを生成するために必要な成分が「コラーゲン」なので富士フィルムの「コラーゲン」に対してのノウハウ、技術は即、化粧品製作に役立ちました。「綺麗な写真」を色あせさせない技術が「綺麗な肌」を色あせさせない技術へと転換されました。
「石」をフィルムではなくコラーゲンに設定した妙ですね。
マッキンゼー&カンパニーが2018年に発表したレポートによると「2000年以降に大きく成長した企業の多くは、経営資源を既存の成熟、市場、衰退、市場から成長市場に大胆に振り替えることに成長した企業であり、同じ市場にとどまりながらシェアを増大させた企業はほとんどない」と報告しています。
日本人は、「一所懸命」「石の上にも三年」というように、1つのことを貫徹することを良しとする美意識を持っています。
しかし、産業構造が激変する時代では、それを盲信することは危険ではないでしょうか。
アンディ・ウォーホルは、成功の秘訣を「しかるべき時に、しかるべき場所にいること」と述べましたが、今、座っている「石」は適正なものか、疑う感性はとても大切だと思います。
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