物語の力を科学する…人を突き動かすストーリーの条件
優れたリーダーは「標語」(スローガン)の立て方がとても上手です。
例えば、政治の世界で有名なものとしては「所得倍増計画」「日本列島改造論」などがありますね。標語を受けた当時の国民は、希望を胸に働きまくりました。
企業では、松下電器の「水道哲学」やスターバックスコーヒーの「Third Place(第3の居場所)」などが秀逸だと思います。
標語はモチベーションの源でもあり、組織をまとめる求心力でもあります。
同時に、使い方を間違えると集団が極性化する危険性をはらんでいます。
その代表が、戦時下の「欲しがりません勝つまでは」などの標語です。
実は、これらは政府の依頼を受けた大手新聞社が国民から公募したものだそうです。メディアは後に、当時を振り返り「国民は標語に支配されていた」と自省しています。
それだけ、標語にはパワーがあるということです。
優れた標語には必ず「物語」があります。
単なる夢物語でではなく、現実課題に立脚した上で、新しい世界を予感させる独創性を併せ持っています。
そういう意味では、現代に優れた標語が少ないのは、その根拠となる物語が欠如しているからだかだと考えることができます。確かに、抱える課題の指摘ばかりでビジョンが描けておらず、物語になっていませんよね。
では、どうすれば魅力的な物語を描くことができるのでしょうか。
そのテクニックとして、ストーリーテリングの手法を紹介しますね。
古今東西、物語には定型とも言えるパターンがあります。
1、日常の破壊(課題の発生)と冒険への誘い
2、葛藤
3、メンターとの出会い
4、決断
5、ミッションの設定
6、試練
7、成長
8、勝利
9、勝利の宴
ある企業の事例で説明しますね。
1、日常の破壊と冒険への誘い
その企業では、60代の社長のトップダウン経営により順調に成長してきました。
しかし、そんなある日、転機が訪れます。健康診断で社長に再検査の診断がくだります。医療機関で精密検査をした結果、特に異常は見つかりませんでしたが、社長は、初めて自分に「もしも」のことがあった時のことを考えます。「自分の限界を組織の限界にしたくない」との思いで、組織改革の必要性に気づきます。
それは、自分が正解を与えるのではなく「自分たちで知恵を出し合い、正解を導き出し、協働で解決できるチームの育成です。
2、葛藤
とは言え、これまでの習慣を変えるのは難しいものです。任せようと思っても、肝心なところで口出しをしてしまい社員の自発性の芽を摘んでしまうことが続きました。
3、メンターとの出会い
実は、その社長は僕のセミナーの受講者なのです。メンターは僕と言いたいところですが、そうではなく一緒に受講したA社長でした。セミナーを機に親睦を深め、任せられない自分の情けなさを相談します。相談をするうちに、社長は、その原因を「自分のコントロール下に置けない恐れ」にあることに気づきます。
4、決断
社長は、任せる怖さを正直に社員に伝えました。そして、社風の変容を通じ人間的に成長することを宣言します。
5、ミッションの設定
表向きの課題は、自律型組織への変容ですが、社長は「その先」に広がる世界…真のミッションを考えました。
その結果、これに成功すれば、リーダー依存の危機から脱却できるだけでなく、「自分で決める愉しさ」「仲間を助ける醍醐味」「助けられる有り難さ」「仲間と達成する喜び」といった働きがいの高い職場も実現します。
社長は、この物語に次のような標語をつけました。
「世界一魅力的な会社を自分たちので手で」
もうお気付きだと思いますが、プロジェクトを物語たらしめるのは「願望」です。
願望は、公の理由よりも私的なものの方が効果を発揮します。公の理由とは、例えば「変化が激しい時代だから」といったもので、表現は「する必要がある」という主体がはっきりしないものになります。
対し、私的な理由とは、件の社長のような「自分の限界を組織の限界にしたくない」といった願いで、「こうしたい」あるいは「これは嫌だ」という表現になります。
その願いにフォロワーがつき、組織内にムーブメントが広がります。逆に、どんなに合理性のあるアイデアも、そこに主体者がいなければムーブメントにはならないのです。
最後にまとめます。
□優れた組織には優れた標語がある。
□優れた標語は優れた物語に裏打ちされる。
□優れた物語にはリーダーの個人的な思いが宿る。
□思いを持った人にフォロワーがつきムーブメントが発生する。
というわけで、参考にしていただければ幸いです。
※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。



