部下に自立を求める組織が破綻する原理的な理由

リーダーであれば、部下に自立を求めますし、自立した個人が集まった組織は強いはずだと考えると思います。

しかし、本当にそうでしょうか。
自立は大切なことですが、それだけでは組織は良くならないと思うのです。それどころか、原理的に破綻する危険性をはらんでいます。

完璧な自立を目指すということは、助け合いや協働を否定することになるからです。

自立を称賛する背景には、日本人特有の「他人に頼る=迷惑行為」と捉える文化があります。
日本では、子どもの頃から「他人に迷惑をかけてはいけない」と教わりますが、インドなどでは「人は他人に迷惑をかけるものだから、他人から受けた迷惑には寛容になりなさい。許しなさい」と教育されるそうです。

頼ることは本当に迷惑なのでしょうか。

「甘える」と「頼る」は違うという話を聞いたことがあります。
甘えは、頑張れば自分でできるのに、努力をせずに他人に依存すること。頼るというのは、自分ではできないことを他人に依頼することです。
本当にその通りだと思います。

完璧な自立を追求するということは、自分にできないことがある事を認めないことになります。
リーダーがこの思考に陥ると、メンバーに対し、他人を頼ることを禁止します。「自分でなんとかしなさい」と。

誰しも、自分にできないことを持っており、だから仲間と協働して能力の凸凹を埋める必要があるわけです。
それが組織の総力を最大化するとともに、メンバー1人1人の幸福度が上がる最も有効な方法でもあります。

他人から頼りにされることは不快なことではなく、むしろ「快」です。
ヒトは、1人では何もできない不完全な状態で生まれます。馬などは、誕生後、数時間以内に立ち上がることができますが、ヒトはそれができない。
不完全な状態で生む理由は、脳の成長が急速で頭が大きくなるため、身体の成長を待っていたら、産道を通れなくなるからと言われています。

私たちは、他者の施しなく生きることができないという宿命を、生まれた時に刷り込まれる。
だから、他者に施すことを「快」を感じるようになったと言われています。(不快であれば続かず絶滅したであろう)

そして、そこからチームワークを形成することを覚え、幾多の試練を乗り越えてきたという歴史を持っています。

自立を、誰にも迷惑をかけないことと定義すれば、それは同時に、誰からも必要とされない世界になることを意味します。
この上ない苦痛だと思いますが、いかがでしょうか。

今日の記事は、自立を否定するものではありません。ただ、自立「だけ」を追求することは、原理的に組織を破綻させるということです。
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