「誰がトップか分からない組織」が最強である理由

人が育ち、組織の自律性が高まると、一見しただけでは、誰が社長か分からなくなります。
熱量、視座ともに社員さんが社長と同じようなレベルになるからですが、その様子を新幹線に例え、僕に教えてくれたのは、先日他界された、老舗ギターメーカー「フジゲン」の創業者、横内祐一郎さんです。

普通の電車は先頭車両だけが動力を持っていますが、新幹線は、各車両が持っているんですね。
だから、あの速度が可能なわけですが、これは、企業で言えば、社長が組織を牽引するのではなく、メンバー1人1人が組織を動かしているということです。
当然、バラバラにならないように「行き先」を共有し、力を合わせる必要があるわけですが。

以前に、社内研修を行った、茨城県で理美容店を多数展開する「株式会社エイチ・エス・ケイ」がそうでした。
研修の打ち合わせは、ある幹部社員さんと行ったのですが、僕は、その方をずっと社長だと思っていたんです。
研修当日に違う方が「私が社長です」と出てきて驚いたのですが、その時に、社長が「うちはメダカの学校なんですよ」と教えてくれたのです。

童謡「メダカの学校」の歌詞にこんな一節があります。

♪メダカの学校の メダカたち 誰が生徒か 先生か 誰が生徒か先生か みんなで元気に あそんでる。

社員研修を社員さんが主体的に企画するほどの自律性が育っている同社では、誰が社長か分からなくなるのです。

自律性の高い組織の強さは、ヨーロッパ人がネイティブアメリカンを征服しようとした際にも見られました。
ヨーロッパ人は、組織を壊すには頭を潰すことが最も有効と考えていたのですが、ネイティブアメリカンに関しては、潰しても次から次へとリーダーが出たと言います。
いわば、リーダーシップが組織に埋め込まれてた状態ですが、その要因は、意思決定のプロセスにあると考えています。
ネイティブアメリカンは、物事を決める時に、多数決は取らず懇々と話し合いをするそうです。話し合いには子どもも加わります。今後、何十年も生きる人と、老い先短い人とでは、思考の質が変わるからです。そして、なんと7代先の人々の利益を考え話し合うというから驚きです。

人は意思決定に参画した分だけ、物事を自分事にします。みんなが同レベルで自分事にしたからこそ、リーダーシップが埋め込まれたのだと思います。

また、上質な意思決定を行う際には「なぜ」を突き詰める必要があります。
この件で洞察を与えてくれるのが、イソップ寓話の「レンガ積み職人」です。
ある旅人がレンガ積みをしている3人に「ここでいったい何をしているのか?」と尋ねることから物語が始まります。

1人は「見ての通りレンガを積んでいる。大変だ」
2人目は「大きな壁を作っている。おかげで家族を食わせることができる」
3人目は、「歴史に残る偉大な大聖堂を造っている。人々が救われるなんて素晴らしい」

レンガ積みという行為の理由を、人々の救済と認識している3人目の職人は、きっとお会いすれば、「もしかして、この人が社長?」と思わせる迫力があるでしょう。

「なぜ」を深く共有できたとき、組織の中にリーダーシップが宿り、簡単には崩れないしなやな強さが生まれます。
僕が見てきた「誰が社長か分からない」組織には、それがあるということです。

大量生産・大量消費の時代では、強いトップが先導し一気呵成で進めるスタイルが適していましたが、創造性の時代では動力の分散が求められます。
もちろん、行き先の設定はトップの仕事ですがね。

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