優れたリーダーは「横のつながり」で組織を強くする。

あなたの部下は、普段、誰を見て仕事をしているでしょうか。
これは、変化の時代を生き抜く上で非常に重要な問いで、もし、社員が見ているのがリーダーだとすれば、自律性の醸成は難しいと思います。

日本サッカーの元監督、フィリップトルシエ氏は、在任中に「ピンチの時に監督の方を見る選手は育たない」と言いました。
プレー中に細かな指示を出せないからですが、それはビジネスも同様で、変化が激しい環境下ではリーダーが細部に渡る意思決定を行うことは困難です。

一流サッカーチームでは、選手は監督ではなくフィールド全体を観てプレイしています。特に優れた選手は、敵を含む全選手の配置や動きが観えると言いますから凄いですね。

ベルリンフィルのリハーサルの際に、調和がとれない状況を打破するために、カラヤンが第一バイオリンに伝えたアドバイスはただ1つでした。

「私を見ないでフルートの音に耳を傾けて」

自律性の高い組織では、メンバーは、リーダーよりも、顧客や仲間を観ています。

僕の友人が経営する居酒屋では、スタッフが、店内にいるお客様と仲間の動きはもちろんのこと、「ビールのおかわりが来る」とか「そろそろ水を欲しがる」といった予測や、忙しい時の仲間のストレス度合いまで観えると言います。

凄まじい情報処理能力ですね。

次の図は、トップダウン型(左)と自律型組織(右)の情報流通量を比較したものです。

矢印の数が情報流通量ですが、トップダウン組織の場合、部下が上司に情報を上げ、それを基に上司が意思決定し、部下にフィードバックするので、情報量は「2n」ですが、自律型組織の流通量は、n(n-1)になります。※n=部下の人数
5人の場合、トップダウンでは10の流通量に対し、自律型組織では20の情報が流通することになります。

私たちは、部下1人1人に丁寧に関わる上司を良いリーダーと評価してきましたが、それは、情報量がリーダー1人で処理できる範囲内である場合に限ります。
時代が変われば理想的な関わり方も変わるのです。

勿論、仲間に言えないナイーブな案件は上司に相談できるセーフティーネットが必要ですが、通常は「横のつながり」を強化し組織的に活動することが重要です。

集団活動を活性化するためには、次の5つの要件が必要です。

1、良好な人間関係。
2、チームとしてミッションを持つ。
3、リーダーが「アメとムチ」で部下をコントロールしない。
4、メンバーが意思決定に参画できる。
5、情報が開示されており、誰もが瞬時にアクセスできる。

子どもが自転車に乗る練習過程で、大人の支えが必要なのと同じように、自律性を育てる際にも上司のサポートが欠かせません。
育成には時間がかかりますが、仲間と協働する愉しさを味わえば、手を離しても自力で漕ぐことができるようになるでしょう。

そして、メンバーが口にする言葉が変わります。
仕事が上手くいった時に、「リーダーのお陰です」と言っていた部下が「仲間のお陰です」と言うようになります。

「誰を見て働くか?」で、組織の質は決まります。
リーダーの顔色ではなく、仲間の動きや顧客の声を見て行動するチームは、まるでジャズの即興演奏のように調和します。
自律性は一朝一夕には育ちませんが、そのプロセスを経た組織には有望な未来が待っています。それを信じて待つ。手を離す勇気もまた、リーダーの大切な仕事ではないでしょうか。
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