最も好調な時こそ危ない──“次の季節”に備える経営の教訓

人生の最も良い時期を「この世の春を謳歌する」と表現しますよね。
これが夏でも、実りの秋でもなく、春というところに、幸福の真理が表れていると思います。
春は、長く続いた冬が終わり、これから様々な生命が芽吹く、一年の中で最も希望を感じる季節です。
私たちは、現在地点よりも伸びしろ、つまり希望がある時に幸福を感じるものだと思います。

栄枯盛衰を春夏秋冬で例えることがありますが、これは科学的にも理に適っています。
ビジネスの世界で最も活用されている理論に「ライフサイクルカーブ」があります。

これは、導入期→成長期→成熟期→衰退期からなる栄枯盛衰のモデルです。それぞれ次のような特徴があります。

春…導入期
新商品・新サービスが市場に出たばかり 認知が低く、売上はまだ少ない。

夏…成長期
市場に受け入れられ売上が急拡大 競合が増える。コストが下がり利益が出やすくなる。ブランド構築・差別化が重要になる。

秋…成熟期
市場が飽和し、成長が鈍化。製品の差が小さくなり価格競争が激化。維持コストとブランド力が勝負のカギを握る。

冬…衰退期
需要が減少し、売上・利益が落ち込む 撤退や事業転換を検討する企業が増える。一部はニッチ市場に絞って生き残る。

春夏秋冬を意識すると、季節ごとに合理的な判断、意思決定ができるようになります。

しかし、人間は今の季節がいつまでも続くと勘違いしてしまうもの。
僕はこれまで、多くの社長を見てきましたが、夏真っ盛りの時期に、この勢いが今後も続くという希望的観測を抱き、次の季節の準備を怠る人を何人も見てきました。
中には、自社ビルを建てて、その直後に成熟期に入り、これまでにように利益が取れず、自社ビルを安値で売り払った人もいました。

ちなみに、僕が新聞店の社長に就任したのは、1995年…業界のピークであり、インターネット時代の幕開けの年でした。
当時、僕は24歳、いわゆる「トレンドセッター」の世代でしたので、業界が今後、衰退することを肌で感じていました。
なので、自然と就任直後から業態転換に取り組むことができました。しかし、僕の活動を見た先輩の中には、「余計なことをして馬鹿じゃないのか?」と蔑む人もいました。
彼らの自慢のベンツはご健在でしょうか。

最も良い時は、準備の時。
「勝って兜の緒を締めよ」という格言がありますね。物事が順調に進んでいる時こそ油断しないように、謙虚に努力を続けるべきだという教えですが、努力の質を間違えてはいけません。
従来の努力を続けるのではなく「季節の変わり目を渡る」努力が重要なのではないでしょうか。

僕が住む町はちょうど「ほたる祭り」が開催されていて、商店街の通りは屋台で埋め尽くされています。祭りの屋台はライフサイクル運営が非常に優れていると感じています。
屋台がどのような組織体で運営されているか知りませんが、おそらく、新規出店を戦略的、かつ組織的にたくらんでいると思います。

たこ焼き、イカ焼き、焼きそばなどは定番ですが、毎年、必ず新ジャンルが登場するんですよね。
韓流が流行った時には「トッポキ」や「ハットグ」なんてマニアックなメニューが登場しましたし、最近では「10円パン」なる謎のパンが人気のようです。

 

5年前には、「点滴ジュース」なる謎のジュースを売っていましたが、今は、見ることがなくなりました。

このように、常に新ジャンルを投入しているのですが、ここに「未来の種まき」という戦略的意思を感じるのです。
「点滴ジュース」のように芽が出ずに撤退したアイデアも多かったでしょうが、稼ぎ頭に成長したアイデアが定番とともに収益を支えていると思います。

よく「変化を恐れずに」と言いますが、それができるのは、春夏秋冬の理を知り、正しい判断ができる人だと考えます。
変化するからこそ、無限の可能性と希望が宿るのではないかと思うのです。

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