成長し続ける社会で、なぜ私たちは満たされないのか?
「お忙しいところ」という枕詞をつけるように、私たちは多忙であることを非常に称賛します。「お暇だとは思いますが」なんて言われたらちょっとムッとしますもんね。
多忙は、人様に必要とされている証と考えるからですが、果たして、本当に人様のために時間を使っているでしょうか。
もしかしたら、私たちはお金のために時間を使う「お金の奴隷」となり、お金にこき使われているのかもしれません。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリは著書「サピエンス全史」の中で「人間は穀物の奴隷」と述べています。
穀物は保存が効くので、人々は、できるかぎり多く生産し所有することを望みます。穀物の立場に立つと、人間は、自分の種を繁栄させるために身を粉にして働いてくれる奴隷に映るというのがハラリの主張です。
やがて、その文脈を引き継いだ貨幣が発明され、今日の資本主義が出来上がったというわけです。
資本主義は「無限の成長」を前提として発達してきました。
かつて、経済学者のケインズは「100年後には週の労働時間は15時間ほどになるだろう」という予測を立てました。物質的な充足が完了したユートピアを描いていたのです。
100年前の人が見れば、現代はユートピアに映るはずですが、ケインズの予測は外れ、現代人は以前よりも忙しく働いています。
私たちは、一体、何に時間を使っているのでしょうか。
ここに資本主義の課題が浮かび上がります。
投資家は成長する企業に資金を投入し資本の増殖を求めます。お金の調達の仕組み上、資本主義は無限の成長を追い求めるようにできています。
投資信託は、安定した利回りで、ずっと成長する商品が人気ですからね。
物質的充足が満たされ、社会が成熟することは良いことにも関わらず、資本主義はそれを祝福することができないのです。
そして「仕事を増やすための仕事」が増えます。
例えば、マーケティングがそれです。
マーケティングは米国で発明されたものですが、その手法は「問題の設定」から始まります。
「○○でお困りではないですか?」と切り出し、その解決策を提示するのが常套手段です。つまり、わざわざ問題を生成し解決策を提示する「マッチポンプ」を行うのです。
人様のお役に立つことで忙しいなら素晴らしいことだと思いますが、「仕事を増やすための仕事」で忙しいとしたら、働き方を根本的に見直さないと、奴隷のまま一生を終えることになりかねません。
ユートピアを生きているはずの現代人が、豊かさを実感できない理由は2つあります。
1、成長が望めない失望感
2、他者よりも劣っている敗北感。
どれも「○○感」…つまり、相対的に、そう感じているだけということです。
マーケティングの餌食になりやすい欠乏感ですね。
もちろん、現代社会にも絶対的な貧困という非常に重大な問題があります。しかし、奴隷のように働き続けることも同じくらい深刻な問題だと思います。
実は、この記事を書いている今、経営者仲間の親友たち出雲を旅行しています。
親友たちは、顧客に喜ばれることに時間を投入し、信頼を蓄積し、非常に「高め安定」な商いをしています。彼らから「昨年対比○○%UP」という話は一切出ません。
だから余計な仕事がなく4日間も旅行に行けるのです。
豊かさのための「もっと多く」が、豊かさの欠乏感を呼ぶという不条理。
ケインズの予測が外れた今こそ、「働く」と「生きる」を重ねて問い直す時なのかもしれません。
.
※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。
▷セミナー、イベント、社内研修のお知らせ
■【残席2】指示ゼロ経営マスタープログラム12期(7月4日開講 全5回コース)
・自発的に共創するチームワークの条件
・短時間で豊かなアイデアを出す会議の進め方
・全員参加のプロジェクトの組み立て方
・自律型組織特有の部下との接し方
・自発的、継続的にPDCAを回すための仕組み
自分たちで課題を見つけ協働で解決する組織の絶対条件を学びます。
■社内研修のご依頼はこちら
みんなで学び一気に指示ゼロ経営の文化を創る。
現在「社内研修」を2社、「研修から伴走までの完全パッケージ」は1社受け付けております
■講演会を開催したい方
所要時間90分。経営計画発表会や新年決起大会の後に!
・自発的に働く意義と愉しさが体感できる。
・事例9連発!「自分たちにもできる」と行動意欲が高まる。