社員を責める前に、必ず「環境設定」を疑う

おかしな事が起きる原因のほとんどが環境設定の間違い

産経新聞によると、かんぽ生命保険の不適切な販売の件で、先日、日本郵政は15000件以上の不正販売があったと発表しました。
契約更新の際に、長期に渡り二重契約をしたなど、信じられない実態が明らかになった。

会見では常務が「社員のコンプライアンス意識の向上や再発防止策に全力をあげる」と述べました。
また、管理を怠った管理者850人も検討しているとのこと。
そして、このひとことです。
「ノルマが原因ではない」

詳しい内部調査はこれからなのでノルマが原因かどうかは断定できません。
でも、常務の弁が本当だとしたら、ゆうちょ銀行の社員には管理されないと不適切な事をする人が多かったということです。

そんな事があるわけがありません。
日本中に数千万人いる労働者の多くが、そんなに管理されずとも不正はしません。
同社にだけ偏って悪人が集まったなんてことはありませんよね。

「そういう環境だから、そうなった」…環境設定の問題で、それをつくり出した経営者の責任です。

さて、こんな不適切販売は普通の企業では起きませんが、環境設定が間違っているために起こる弊害は多くあると思います。

例えば、ノルマが厳しく、お客様に押し売りをすることはよくあります。
ウチにも不動産投資会社からしょっちゅう電話が来ます。
夜8時過ぎにかけてきて「要りません」と断っても、「そう言わず、もう少し話を聞いて下さい」と食い下がります。
以前の僕は、営業マンに腹を立てましたが、今では、可哀相だと感じます。
普通、お客様に嫌がられる事を好んでする人なんていません。
そうせざるを得ない環境に身を置いているからです。

顧客の信頼という繁栄の礎を失う「長期的に損をする環境設定」になっているわけです。

社員を責める前に、環境が適切かどうかを見る

購買部門(材料仕入れ)が原価を下げる事を要求され、それで評価されると、当然、単価を下げるために予算内で最大の購入をします。
それが次工程に回らずに在庫の山ができます。
在庫は「まだお金になっていないお金」で経営を圧迫します。
購買部門は、与えられた環境の中で最善を尽くしたわけですが全体の利益に繋がりません。

「全体として損をする環境設定」になっているということ。

社内で競争原理を働かせ、利益の分配を成果を出した者と、そうでない者に傾斜配分をすると人は当然、自分の評価を上げることを考えます。
自然なことです。
すると、困っている仲間を助けません。
もし助けたことで、その人の成績が上がると自分の評価が相対的に下がる可能性があるから。
助け合った方がはるかに成果が出ますし、助け合いの中で多くの知恵が生まれます。

今は知恵で勝負する時代ですが、そうならない環境設定をしてしまっているということになります。

ほとんどの企業はチームのワークで成果を上げています。
1人1人が個人商店のように個で完結している企業はないと思います。

「全体の協働で成果を出す」…こうなる環境設定が欠かせませんが、経営者が部分にしか目が行かないと間違った環境設定をしてしまいます。

それも無理もないことで、問題は、最初は細かな部分で起こりますから、そこに目が行っちゃう。
個別を責めたくなります。
そして個別の改善を考えると、個別は改善されるが全体が悪くなる。

そんなことが多く起きていると思います。

個を責める前に環境を疑う、今回のかんぽ生命のニュースを見てとても大切な視点だと思ったのです。

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