「賃上げのために値上げする」に潜む危険性

今年もまた、最低賃金の見直しの時期になりましたね。
全国平均で時給1,177円となり、2025年度から56円引き上げられます。

ここ数年、順調に賃上げが進んでいるように見えますが、一方で、大手企業と中小企業との間に賃上げ格差が広がっているようです。
あるいは、同じ規模、業種であっても、企業によって格差が生まれています。

その原因を理解しないまま、世間の波に流されるのはとても危険だと考えています。

一体、格差の背景には何が起きているのでしょうか。
政府は、賃上げの原資を確保するために、盛んに「価格転嫁せよ」と言いますよね。
そんな風潮に乗り「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のごとく、しらっと値上げしようとしても、事はそんなに甘くありません。

今は、成熟社会で、ほとんどの生活者は十分に便利なモノに囲まれ、豊かな生活を送っています。
当然、市場は飽和しますので、熾烈な競争が始まります。
そうなると、市場No.1の企業がスケールメリットを活かし最も有利に経営を展開します。
自動車メーカーではトヨタ一強になっているように、必需品の市場は、やがて勝者総取りとなるでしょう。
この市場で戦うなら、絶対に勝たなければならず、勝った企業だけが、十分な賃上げを行うことができるというわけです。

一方で、自動車メーカーで言えば、スバルやマツダ、外国車ではMINIのように、特定の人の心に刺さる車…「感性価値」で勝負する企業も元気です。
きっと、賃上げの原資を十分に稼いでいるでしょう。

つまり、みんなが成長するという時代ではない以上、基本的に、賃上げは企業努力の問題で、賃上げの原資を自助努力で確保しなければならないということです。

なので、赤信号をみんなで渡ることは危険で、実際に、下手に飛び出して、一巻の終わりという企業も増えています。
東京商工リサーチの調査によると、2026年8月の人件費高騰が原因の倒産は、昨年対比121.5%増となっています。

では、賃上げの原資とは具体的に何でしょうか。
それは「売上総利益」です。
賃金(全員分の総額人件費)は、売上高でも経常利益でもなく「売上総利益」に比例しています。
売上総利益に対する総額人件費の割合を「労働分配率」と言います。
実際に、過去の決算書から計算すると、労働分配率はそんなに上下していないと思います。それは、売上総利益に連動して人件費を出してきたということです。

政府が勧める価格転嫁は、売上総利益を稼ぐ手っ取り早い方法ですが、すでに述べたように、考えなしの値上げは危険です。

・万人向けの市場で経営する大企業であれば、市場No.1になること。
・その大企業から仕事を受託している企業は、価格交渉を行うことです。しかし、政府は「値上げの根拠を示せ」と言っています。
つまり、賃上げ額から売上総利益→売上高→価格と逆算し提示するということです。

・感性価値で勝負するなら、社員の創造性が高まる組織文化をつくることが欠かせません。その方法は、ブログでたくさん紹介していますので、バックナンバーから「現代人のモチベーションと創造性」のカテゴリーにある記事をご覧ください。

価格転嫁は、単なる数字の調整ではなく、企業努力の問題です。
最低賃金の見直しの時期に、一度立ち止まり、自社の経営スタイルをチェックしてみてはいかがでしょうか。

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