人選間違えていない? 組織を変える意外な人物とは?

よく「新しいことに取り組みたいが、みんなが賛同してくれない」「先代から経営を継いだが、社員が自分についてきてくれない」という相談を受けます。
僕が「みんなというのは全員ですか?」と聞くと、そんなことはなく、何人かは賛同者がいるんですよね。
というか、一人でも賛同者がいれば十分だと考えていますし、一人もいなければ、まずは、たった一人をつくれば良い。

組織は、パンデミックと同じように、一気に変わるのではなく、最初の一人から始まり、徐々に変わっていき、ある臨界点(閾値)を超えると一気に変容します。
そして、そこには意外なキーパーソンがいて、そこにリーチすると組織は急激にに変わります。

❚ 「みんなが…」とは実際には何人なのか?

多くの人は「みんながやっていれば自分もやる」と考えます。
では、「みんな」…とは実際には何人なのでしょうか?
このことを、僕の息子のクラスにニンテンドーDS(ゲーム機)が普及した事例をモデルに考えます。

息子が小学校の時に、ニンテンドーDSが流行り、息子は僕に「みんな持っているから買ってくれ」とせがみました。
僕が「みんなとは、クラス全員なのか?」と聞くと、そうではないようです。

息子のケースを、9人のモデル図にしました。

一番上が息子で、息子はいつも4人の子とつるんでいます。(黒い線で結ばれている関係)
息子から見た自分以外の4人が、息子の「世界」で、その中の2人が所有しているので、息子には普及率50%と映ります。実際は9人中3人…33%なんですがね。

物事の普及には一定の法則があり、集団の、およそ16%〜25%に普及すると、その後、一気に全体に拡がることが社会心理学の研究で明らかになっています。
娯楽などは普及しやすいので閾値は低いのですが、「イジメを止める」といったリスクを伴う行動は、おそらく30%〜35%ほどが必要です。

息子のケースは娯楽ですから、仲良くしている4人のうち1人でも所有すれば、普及率25%なので閾値として十分ですし、2人が持てば50%…もはや「みんなが」なのです。

❚ つながりによって「みんなが…」は変わる

さて、話が面白いのはここからです。
実は、集団の人間関係は、全員が全員とつながっているわけではなく、「つながりのバラツキ」があります。

例えば、先ほどの9人の集団のつながりが下図の通りだとします。

先ほどと同じで、DSの所収者は9人中3人ですが、この繋がりでできる、各人の世界では「50%の人が所収している」と認識されるのです。
1人1人をピックアップして計算してみると分かりますが、全員にとって「自分とつながっている50%がDSを所収している」という世界ができあがっています。

❚ 組織変容の実務

つながりを変えることで普及を促せるということですが、これを現実的な組織運営に落とし込むとどうなるでしょうか。

仮に、下のモデル図でシミュレーションしてみましょう。
「リ」と書いているのはリーダーです。
このモデルにおいて普及の鍵を握るのは、多くのメンバーとつながっている「Aさん」です。現実の職場では番頭さんでしょうか。

しかし、Aさんの世界では、自分以外の5人のうち、その気になっているのはリーダー1人…20%です。娯楽と違い、ビジネスの閾値は高く、25%〜30%ほどですので、おそらくムーブメントは起こりません。

この場合、リーダーはどうしたら良いでしょうか?
1つの方法として、Aさんに「Bさんが賛同してくれたら一緒にやろう」と、話を持ちかけることができます。

Bさんから見れば、リーダーとAさんが誘いに来たのだから、Bさんの世界では100%がその気になっていると観えます。
で、Bさんが賛同すれば、当然、Aさんは乗りますよね。
C、D、Eは、Aさんとだけつながっているので、Aさんが賛同すれば、彼らの世界では「100%が賛同している」ということになり、無事にムーブメントをが起きることになります。

このように、ムーブメントとは割とシステマチックに起こすことができるのです。

ただし、集団には「ラガード」といって、ムーブメントに乗らない人がいるものですので、100%が賛同することなど期待しないことです。

また、ただつながりを作れば良いというわけではなく、そこで何を伝え、どんなコミュニケーションをとるかも重要です。
今日の解説は、あくまでも理系的な理論上の話であり、現実は、伝え方など人文学的な能力も必要です。

そうしたことも考慮し、社内の人間関係模様を図式化し、誰から誘えば良いか?…判断の参考にしてみてはいかがでしょうか。
 

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