経営者の思い込みは、現実を引き寄せる。
人は、自分でも自覚していない「思い込み」を持っていて、それに感情や行動を支配されるものです。
例えば、「任せたのに、どうしても口を出してしまう」「社員に”助けて”が言えない」といった、リーダーにありがちな言動の背景には、「社員を信頼してはいけない」という思い込みがあるかもしれません。
僕がずっとそうでした。
僕は、30代の頃、「社員を頼ってはいけない」と考えていたんですね。だから、社員の能力に依存しないシステム重視の経営を目指しました。しかし、それでは「おもてなし」に代表される感性価値の高いサービスは不可能です。
後に分かったのですが、「社員を頼ってはいけない」というのは、僕がそう思っていただけの思い込みです。
しかし、思い込みってなかなか気づかないんですよね。
実は、僕の思い込みは、父と、経営者になりたての頃にお世話になった先輩の影響によるものでした。
彼らは、常々「経営者は常に強くあらねばならない」「社員にナメられたらおしまい」と口にしていて、それを聞くうちに、僕の中にその考えが刷り込まれたわけです。
僕の考えは社員にも伝わっていたようで、僕との間に距離をとっていました。それを見た僕は、さらに社員を頼らなくなり、思い込みはますます強化されていきました。
思い込みによって引き寄せられた現実により、さらに思いが強化されるという悪循環に陥っていたのです。
その後、僕は、「論理療法」というセラピーを体験し、自分の考えが単なる思い込みであることに気づきました。
論理療法では、出来事そのものではなく「それをどう解釈しているか」…観念にアプローチし、感情や行動を変えます。
「社員に舐められたらおしまい」だから「システム重視の経営をする」というのは、自分を守るための非常に合理的な判断です。
それを、まったく違う合理に変えるのです。
まずは「社員を頼ったら本当にダメなのか?」「社員を頼った経営者は全員失敗しているのか?」「頼ると本当にバカにされるのか?」…これらは事実か? それとも思い込みなのか?…そこに疑いのメスを入れます。
そして、その刷り込みの原体験(父と先輩の影響)を探ります。
その結果、「社員を頼っても何も失わない」→「頼ってみてもいいかもしれない」→「頼ったら大丈夫だった」という成功経験を積み、新しい観念が出来上がりました。
思い込みの多くは、過去の経験や誰かの言葉によって形成され、自分を守る役割を果たします。
だからこそ簡単には手放せませんし、縛られていることにも気づかないもの。
それに気づくシグナルは「〜すべき」「〜でなければならない」といった言葉です。
そんな言葉が増えたら、今まで自分を守ってくれた思い込みから卒業する時期なのかもしれません。
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