心の時代にものを売る。感性価値が導くビジネスの未来。
日本各地で、イオンモールなどの巨大施設と、小さく個性的な店が活況で、中途半端な企業が苦境に立たされているという二極化が起きています。
このトレンドはさらに進むと考えられており、多くの人が、自社の進むべき道の選択に迫られると思います。
というわけで、今日の記事では、進路選択のコンパスとして使いやすい概念があるので紹介したいと思います。
❚ 感性価値と機能的価値から見るビジネスの変遷
商品・サービスの価値には「機能的価値」と「感性価値」の2種類があります。
前者は、車でいえば操作性や馬力、燃費、乗りやすさなど、モノそのものの機能や性能を指します。価値はスペックで評価しやすいのが特徴です。「便利なもの」と言い換えても良いでしょう。
対し、後者は「エモい」「いい感じ」という言葉で表される、情緒を刺激する価値を指します。
優れたデザインや、豊かな人間関係、環境への配慮、作り手の特別な思いや思想など、感性価値は十人十色なのでバリエーションは多様化します。
両者を俯瞰できるように、感性価値を縦軸に、機能的価値を横軸に置いた図を作りました。

この図を用いて、ポジションの選択をシミュレーションしたいと思います。
まず、ポジション変遷の歴史について確認します。
ビジネスの歴史は「食料を安定的に確保したい」「暖かい家に住みたい」といった欠乏の解消から始まりましたので、当初は感性価値という概念は希薄でした。
僕と同じ世代なら記憶にあると思いますが、昭和50年代くらいまでは粗作品が世に出回っていました。それこそ最初から壊れているようなモノがありましたからね。
図では●の機能的価値が低いポジションにあたります。
ここから企業は努力し機能的価値を向上させ、●のポジションの移行に成功しました。
この領域を安定確保したメーカーは「ブランド」と呼ばれるようになりました。
中小企業の多くは、大手の仕事を下請け受注したり、大手が作ったものを販売したりすることで成長しました。
●ではスケールメリットが競争力を生むため、企業は、一気に市場シェアの確保に走ります。
松下幸之助が提唱した、水道の水のように低価格で良質なものを大量供給する「水道哲学」が、この時代の商売を象徴していると思います。
そのお蔭で、今や粗悪品はほとんどなくなり、全国どこにいても良質なものを安価に手に入れることができるようになりました。
同時に、●の市場は飽和し大企業の寡占化が進みます。
まさに「奇しくも」という話ですが、物質的充足がピークに達した1989年(バブルのピーク)に松下幸之助氏がお亡くなりになっています。
今にして思うと、松下氏の逝去は1つの山を超えた象徴のように感じるのです。
❚ 感性価値に進む道は3つある
さて、●の領域が満たされると、感性価値の領域へと進むことになりますが、その道は3つあります。
・商品、技術の質に異常なまでに拘る「クラフトマン」●
・世界観を創るのが得意な「演出家」●
・人間関係を重視する「フェローシップ」●
どれが正解ということはなく、自分の資質に合うかどうかが重要です。
まずは●クラフトマンから見ていきましょう。
このタイプは機能的価値の向上に執念を燃やし、ものづくりを極めます。当然、半端ない思いが込められているためブランド価値(感性価値)も高まります。
その典型として、エルメスやルイヴィトンなどでイメージすると分かりやすいと思います。
次に●「演出家」です。
経営者の中には、世界観をつくることが上手な人がいます。
長野県飯綱町に本社を置く「サンクゼール」がその典型です。数年前に創業者の久世良三さんのお話を聞く機会があり、こんな事をおっしゃっていました。
「ウチはワイナリーと誤解をされます。確かにワインの製造はしていますが、それは私が考える世界観の中にワインが必要だからということなんです」

さらに同社には「土木部」なるものがあり、道や建物を自前で作ったり修繕しています。普通だったら外注するものを内製化しているところに世界観に対するこだわりを感じますね。
最後に●「フェローシップ」ですが、この典型はスナックです。スナックは、どのお店も機能的価値に大きな違いはありません。同じような空間に同じようなソファーが置かれ、同じようなお酒が供されます。(中には料理や世界観で勝負しているスナックもある)
違いはママや店員さんとの間に結ばれる人間関係です。
スナックに限らず、あなたにも「人に会いに行く」「あの人から買いたい」というお店があるのではないでしょうか。
以上のように、感性価値の醸成には3つの方法があります。
繰り返しになりますが、正解はなく自分の資質に合った方法を選ぶこと大切です。
また、3つは組み合わせることができます。それぞれが得意なスタッフが活きる経営をすれば、ハイブリッド経営が実現するかもしれません。
感性は十人十色なので、ニッチを相手にできる中小企業はチャンスだと思います。
今日の記事を参考にしていただければ幸いです。
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