文化は「みんな」の行動で作られる…“朱に染まる”マネジメントの要諦

多くの企業と接していると、企業の文化は十社十色であることを実感します。

「上司の目を気にせず自由に活動している」
「一人親方の集まりでチームワークが形成されない」
「会議では誰も喋らずお通夜状態になる」
「辛辣な発言が多いが決して不仲でない」
「発言は立派だが行動が伴わない」
「みんな喋らず静かだが、しっかり思考し確実に成果を出しに行く」
「疑心暗鬼が渦巻き、信頼関係が醸成されていない」

業種特性や経営者の個性などで文化は大きく変わりますが「これを欠いては何をやっても上手く行かない」という文化があります。

それは「誠実さ」です。

1、商品、サービスに対する誠実さ。
2、技術やノウハウ、仕事の取り組みに対する誠実さ。
3、顧客や仲間(先人も含む)、自分自身に対するに対する誠実さ。
4、地域社会に対する誠実さ。

これらを欠くと経営は絶対に上手くいきません。

もし今、誠実さが足りないとするならば、どうすればそれを取り戻すことができるでしょうか。
その要諦は「朱に染まれば赤くなる」の諺にヒントがあると思います。
これは、中国古典『太子少傳箴』の一節で、「皇太子の教育係というのは正しい行いをする人物でなければならない」ということを「朱に近付く者は赤くなり、墨に近付く者は黒くなる」という例えを用いて述べています。

人は環境により言動が変わります。
例えば、僕の友人に高級ホテルや格式高いレストランに行くと急に紳士になるという、分かりやすいヤツがいますが、こうした傾向は、誰にも多少はあるのではないでしょうか。

ここで深く考えたいことは「環境とは何か?」ということです。
『太子少傳箴』では「付き合う人」と定義していますが、実は、これは組織開発の原則なのです。
組織開発では「人は、みんなの影響を受ける」という法則を活用し組織風土を醸成します。
みんなが誠実な行いをすれば、新しく入った社員も、当たり前に誠実になる。

ここで注目したいのは「みんなとは誰か?」ということです。

「みんな」の認識はどのようなものでしょうか。
文字通り解釈すれば「100%」ということになりますが、実際はそうではありません。

僕が「みんな」の認識に興味を持ったのは、息子が小学生の頃、ニンテンドーDSを買って欲しいとせがんだ時でした。
息子は「みんな持っている」と言います。
「みんな、とは100%なのか?」と聞くとそうではない。クラスの2割程度の少数派なのです。
しかし、息子はDSを持っている少数派と良くつるんで遊んでいたので、息子からすれば「みんな持っている」と感じるのです。

息子は、ゲームのコミュニティ意外にも、5人ほどのスイミングスクールのコミュニティにも所属していました。当初、そこにはDS所有者はいませんでしたが、息子がDSを持ったことで、所有率は25%になりました。息子の影響を受け、もう1人が保有すれば、所有率は40%になります。
そうなれば「みんな持っている」ですね。

人は、自分のコミュニティを世界とみなす傾向が強いと言われています。

世界とは、決して大げさな社会全体ではなく、日々顔を合わせる5人ほどのスモールワールドです。その世界が、私たちの思考と行動の前提を決めます。

企業文化を変えるとは、共通の文化を持つスモールワールドを増やしていくことです。
まずはリーダーが、普段から身を置くスモールワールドで「誠実な世界」を醸成すること。
1つで良いので濃い世界をつくると、そこにいるメンバーが、他のコミュニティに伝播させていきます。
そう考えると、誠実な組織文化への変容は、そんなに遠い道のりではないことが分かるのではないでしょうか。

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