トラブルの芽は“黙った瞬間”に生まれる──対話を止めない組織の作り方
企業で起きる様々な問題を、発生原因にまで遡ると、多くの場合「対話不足」に行き着くと感じています。
例えば、僕が経営してきた新聞店では、ある時期、急にクレームが増えたことがありました。
以前はこんなに多くなかった…
いつからおかしくなったのか?と発生を遡ると、対話が希薄になった時期なんですね。
クレームは、確認すべきことを確認しないことで起こります。特に、次工程へ仕事を渡す時に確認を怠ると発生率は上がります。
対話不足が引き起こすのはクレームだけではありません。
チームで仕事を進める上で大切な、ビジョンや計画、進捗状況などの共有にも弊害を及ぼし、組織的な仕事ができなくなります。
ということですが、問題は、なぜ対話が希薄になるか?です。
そこには、ある典型的なパターンがあります。
「はなこさんじゅうごさい」
突然、文章が変わって戸惑ったと思いますが、上の文章の「はなこ」の年齢はいくつでしょうか。
「はなこ、さんじゅうごさい」と読んだ人は35歳。
「はなこさん、じゅうごさい」と読んだ人は15歳と答えます。
このように、同じものを見ても、人により違う解釈をするものです。
「みんなで話し合う」の「みんな」とは誰のことなのか?
「たくさん用意する」の「たくさん」とはどのくらいなのか?
認識がズレたまま仕事を進めると、いつか「何か変だぞ」と気づくもので、その時に確認すればよいと思うかもしれません。しかし、対話は運動と同じで「しなければしないほど億劫になる」という性質があり、変だと思っても確認しなくなるのです。
2002年、みずほ銀行の統合の際に発生したATMの大規模システム障害では、後になって、現場から「このスケジュールでは非常に難しい」という懸念が出ていたことが確認されています。
ところが、上層部には、その声が「頑張ります」に転換されていたのです。
「はなこ」は35歳なのに、15歳だと思っていた人が「何かおかしい」と気付いても、今さら確認をすることは怖いもの。つい「まあいいか」と放置してしまい、さらに確認が怖くなります。
そして、いつかトラブルが発生する→メンバーみんなが不快な思いをする→さらに対話がしづらくなる…そんな悪循環にはまります。
コミュニケーション不全は派閥の原因にもなります。
オープンな対話ができなくなり、一部の人との閉じたやり取りが増えます。すると、自分が知らない情報が取り交わされることになり疑心暗鬼が生まれます。
「鬼」から身を守るために、自分の味方を増やしていき、やがて派閥が出来上がるのです。
こうした悲劇は、遡ればちょっとした対話の不備が発端なのです。
悲劇を防ぐためには、定期的に「懸念の確認」を行うことです。
「定期的に」という表現も人により解釈が違うので好ましくないですね。僕は、月に一度は行うべきだと考えています。
恐れは、向き合わないとどんどん増大していきます。
逆に、向き合ってみると大して怖くないもの。
面倒と思われるかもしれませんが、事が大きくなってから対処する方がはるかに面倒です。
火種は小さなうちに消した方が良いということで、月に一度は懸念を確認する「戦略的対話の場」をもうけてはいかがでしょうか。
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