形から入り、心に至る。「真似」成長学

自己成長の方法として、優れた人の「振る舞い」を真似るという、非常に効果的な手法があります。
自分が憧れる人をベンチマークし、その人のように振る舞ってみるということです。
例えば、社員を勇気づけるコミュニケーションを取りたいと思っているなら、それができるリーダーの振る舞いを見学し、その言動を忠実に真似るということ。

いわば「自らを躾ける」ということです。
躾は「身を美しく」と書きますが、身(立ち居振る舞い)を美しく整えることで、精神性も整えるられます。
昔から芸事や道の世界では「形から入り、心に至る」といって、正しい形式や行動、道具を整えることで、後から自然と精神や内面が伴ってくるという修養を守ってきました。

僕の旧友に能をやっている方がいます。
習い始めの時に、指導者から「とにかく色々考えずに、決められたように身体を動かせ」と指導されたそうです。
型にはめられることが嫌いな男ですが、指導者の迫力に押され、言われた通りにやっていると、ある日、自分が演じている人物の思考や感情が完璧に理解できるようになったと言います。
その時の様子を「まるで、自分が、その人物になったようだった」と述懐していました。

とは言っても、完全にその人物になるわけではなく、やがて自分なりに消化し、オリジナルの姿に落ち着くのだと思います。
まさに「守・破・離」ですね。

よく「本来の自分」ということが言われますが、本来の自分とは、純粋培養の自分ではなく、色んな人の影響を受け醸成されたものなのだと思います。

このことを、小説家の平野啓一郎さんは「分人主義」と名付けています。
そもそも決まった自分なんて存在せず、友人、家族、職場の仲間など、対する人によって自分の振る舞いは変わるものだし、その人たちの影響を受けながら自分ができあがるという考え方です。

ちなみに、僕が経営者として一皮むけたきっかけを紹介します。
30年ほど前の話ですが、社員との関係が上手くいかず、いつも不安と苛立ちを抱えていた時期がありました。
ちょうどその時期に、義父が病で入院をしていたのですが、ある日、お見舞いの帰り際に、苛立っている僕を見て義父が言いました。

「社長はどんと構えていろよ」

それが最期のアドバイスになってしまったのですが、ずっと、僕の心の奥底に残り続けました。

そんなある日、テレビをつけると、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」が放映されていたのですが、慶喜役の本木雅弘の振る舞いが、義父が言った社長像と重なったのです。
大河ドラマには関心はありませんでしたが、本木雅弘の振る舞いを自分に落とし込みたくて、夢中で観たのでした。

中には、他人を真似ることに嫌悪感を覚える方もいると思いますが、成長とは「変わること」…脳科学では、新たな経験と自身が持つ既存の理論とがぶつかる時だと指摘しています。

ピカソも「他人の模倣は良いが、自分の模倣をするようになると危ない」と言っていますしね。

理想的な振る舞いの積み重ねが、やがて自分の血肉となり、オリジナルへと昇華する。
「本来の自分」とは、ももとあるものではなく育まれていくもの。
そう考えた時、私たちの成長の可能性は、ぐっと広がるのではないでしょうか。

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