「利益至上主義」に陥った末の悲劇
夏の甲子園が始まりましたね。
近年、強豪校での不祥事が問題になり、高校野球に限らず、部活動自体のあり方が問われています。
なぜ名門でそのようなことが起きるのか?…そんな疑問に答えてくれたのは、意外にも定食屋の隣の席にいた3人組会社員でした。
甲子園中継を見ながらひとこと。
「勝つことを目的にするから、ああいう事が起きるんだよ」
この言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中では、ある一文に変換されました。
「儲けることを目的にするから、企業はおかしくなる。」
勝つことを目的にすると、組織は勝利のために一枚岩になります。
褒め言葉に聞こえると思いますが、これが非常に危険なのです。なぜなら、組織が村社会化し正しい判断ができなくなるからです。
社会心理学者、山岸俊男教授は村社会の特徴を次のように挙げています。
勇敢であれ。規律遵守。伝統堅持。忠実であれ。目的のためには欺け。排他的であれ。名誉を尊べ。
いかがでしょうか?
いわゆる古典的な名門校に似ていると感じた方もいるのではないでしょうか。
村社会の対置にある社会を「信頼社会」と山岸教授は呼んでいますが、その特徴も確認しましょう。
自発的に合意する。正直。外部の知恵を入れる。外部の人とも協力する。創意工夫の発揮。新しい発明を取り入れる。目的のために異論を唱える。
やわらか頭のニュータイプといった印象ですよね。
この特徴を見た時に、僕は一冊の本を思い出しました。
「慶應高校野球部『まかせる力』が人を育てる」という書籍です。
同著は、ビジネスパーソンにも素晴らしい示唆を与えてくれます。
まえがきの一文を紹介します。
日本が右肩上がりの成長を続けている頃、企業内で野球部の経験者が求められ重宝された。レギュラーの座をつかむのは指導者の指示を忠実に遂行できる選手であり、先輩の理不尽な要求にもめげないストレス耐性を身につけた者たちだった。
高校野球の世界観はそのような人材を育ててるにあたって有効であり、卒業後は上位下達のシステム内で、一定の評価と成功を収めることが可能だった。
このように前提した上で、慶応高校野球部では、目的を、高校野球のためではなく「社会に出てから活躍する人間になるため」と定めています。その目的のために、勝利という目標を置いているという構図になっているのです。
そして、目的のための教育法が、
「やらせる」ではなく「まかせる」
「教える」まえに「問いかける」
「正解」より「成長」
ということになるのです。
同著には、ライバルである仙台育英高校の須江航監督のコメントも紹介されています。
慶応高校は、個人差はあるにしても、野球の中の瞬間瞬間で、プレーが行われる直前に何をすべきか、彼らの中にはいくつかちゃんと選択肢があると感じます。
例えばランナー1塁で打席に立った。あるいはランナー2塁で自分がランナーという、その場面ごとに、次にどんなプレーをすればいいのか、1つではなくて複数のイメージが湧いている。(中略)思考力のない人間は、選択肢を1つしか持っていない。
僕のブログの読者であれば、喉から手が出るほど欲しい人材ではないでしょうか。
また、同著では、求められる人材像とリーダー像を次のように説明しています。
時代は激変した。現代社会に求められるのは、自ら考え、試行錯誤を繰り返した上で、最適解を導き出せる人材になった。そして、求められるリーダー像も、従来の「俺についてこい」というカリスマ方から、部下との対話を重視し、組織内のモチベーションを高めるタイプへと変わりつつある。
いかがでしょうか。
時代背景を正確に把握し、正しい目的を定める。…そうすれば、目標も、問いかけも、任せ方も、育成法も、自然と1つの方向性が観えてくると思います。
そんな大事を思い出してくれた定食屋の出来事でした。
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