その一言が現実をつくる…部下を育てる「言葉の選択術」

「ある言葉を口にすると、その言葉をもう一度言いたくなる現実を引き寄せる」という話を聞いたことがあります。
相手を罵倒すると、その後、また罵倒したくなるような現実が。感謝をすれば、また感謝をしたくなるような現実が訪れるということです。

このことは、心理学の「ピグマリオン効果」で説明ができるかもしれません。
ピグマリオン効果とは、他者から期待されることで、その期待に沿った成果を出すという心理効果を指します。乱暴に言えば「思った通りに人が育つ」ということ。

例えば、新任の先生が赴任した際、あらかじめ「クラスのA君とB君は天才児だ」と伝えました。ところが実は、その2人は手に負えない問題児なのです。先生はそうとは知らず、天才児だと思い込み接するわけですが、その後本当に成績が良くなったそうです。

リーダーは「いい言葉」を使いたいところですが、言葉のトレーニングとして僕自身が実践しているのは、部下に対し不満を持った時に、意図的に言葉をひっくり返すという方法です。

不満を持った時には、つい「お前はここがダメ」と思ってしまいますよね。しかし、そのモードで部下と接して上手くいった試しはありません。法則通りに、再びそう言いたくなるような現実が訪れるのです。

そこで「言葉の変換」を行っています。
具体的には「ここがダメ」を「こうなって欲しい」というポジティブな言葉に変えてしまうのです。
変換は簡単で、例えば「人の話を聞かない」という課題であれば、「人の話が聞ける」という具合にひっくり返すだけです。
やってみると分かると思いますが、変換すると気持ちがすーっと落ち着くのです。

ここまでが第一段階です。

第二段階は対話術です。
理想は、ストレートに「こうなって欲しい」と伝えることですが、それには確かな人間関係が必要です。
まだそこまでの関係ができていない場合、「成長の物語を紡ぐ」という方法を採用します。

やり方は、次の3段階で進めます。

1、半年前と現在を比べ、自分が成長した部分を確認する。
2、半年後の成長目標を本人に考えてもらう。
3、課題を本人に考えてもらう。

このようにポジティブな流れを作ると、課題を受け入れやすくなります。

例えば「人の話が聞けない」という課題では…
1と2を確認した上で「人の話を聞けるようになる」という課題が出れば良いということになります。
しかし、人は真の課題であるほど…薄々は気づいているのですが…それに蓋をしてしまう傾向があります。

薄い気づきを、より鮮明にするためには、リーダーがそれとなく示すことが有効です。

「別にあなたの事ではないが」という雰囲気で、「人の話を聞くことが大切になるな」などとひとり言のように一般論をつぶやくのです。
あるいは、「そういえばこんな例があったな」と事例を伝える。

あなたにも、示唆を受けてグサっと来たという経験はあるのではないでしょうか。
示唆は説得よりもはるかに効果が高いのです。

「押してダメなら引いてみる」と言いますが、この手法は「引いた後に少し押す」という高度なテクニックなのです。

そして、テクニックが活きるためには、相手の成長可能性を信じること。それがピグマリオン効果を発動させる最重要要件だなのではないでしょうか。
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