儲かっている会社は「顧客の絞り込み方」がここまで違う

中小企業は経営資源が限られているから、それを使う先をどこかに集中しなければなりません。「みんなに愛される」というのは一番ムダな使い方です。誰からも愛されません。
特定の人に、うんと愛されることを目指す方が良いわけです。
独自の領域、世界をつくること。
ところが絞り込みが上手くいかない、しっくり来ないという会社が結構あります。

どうしてか? どうすれば良いのか?
今日は成熟社会における「絞り込み」について考えたいと思います。

「◯◯な気分」という絞り込みで顧客から強く支持される

絞り込みが上手くいかない一番の原因は、「30代のキャリアウーマン」といったカテゴリーで考えるからだと考えています。
こうした絞り込みを「デモグラフィック」と言います。
でも、30代のキャリアウーマンも色々です。ひとことで片付けられないですよね。
「30代のキャリアウーマンのための結婚相談所」ではピンと来ません。

そこで「サイコグラフィック」という考え方が登場します。
それは感性を基にした絞り込みです。
例えば、「結婚願望はあるが仕事が忙しくて出会いがないと焦っている女性」と言った顧客設定です。
サイコグラフィックは文字通り願望、心理状態での絞り込みです。
「こんな欲求を持った人」という設定です。

これが成熟社会、感性社会における絞り込みだと考えます。
モノに満たされた生活者は「心の豊かさ」という抽象的なものを求めます。抽象的な欲求は本当に多様です。
だからこそ非常にチャンスがあると思います。

例えば、僕の友人に福島県でリフォーム会社を経営する矢内 哲さんがいます。
元々は石油を扱う会社だったのですが高齢化社会への対策としてリフォーム分野に進出した挑戦者です。

先日、絞り込みの話をした時に、驚くようなことを教えてくれました。
同社では顧客をこう設定しています。
「定年退職をして家にいる時間が増えた旦那さん」

これはまだサイコグラフィックではありません。
ここからなのです。旦那さんの気持ちなのです。
家にいる時間が増えると、奥様の家事をずっと見ることができます。そして気づく人がいるのです。
これまでいかに自分を支えてくれてきたかを。

そんな奥様も年を取り、これまで住んだ家に不便が生まれます。
それを何とかしたい、奥様への感謝の気持ちを伝える「プレゼント」としてリフォームをする旦那さんが同社の顧客なのです。

感性で絞り込むと顧客だけでなく社員からも支持される

僕はこの話を聞き、とても胸が熱くなりました。
売っているものはリフォームでも、叶えているのは感謝に満ちた夫婦の生活なのだと思ったのです。
コンセプトが決まるとものづくりが変わります。意思決定も変わります。
判断基準が「そういう生活が叶うかどうか?」だからです。
時にお客様にお断りをすることもあるそうです。
「とにかくボロくなった家をリフォームしたい。できるだけ安く」という人はお客様になってくれなくて良いと考えているのです。

矢内さんには「諦めの美学」があります。だからここまで大胆な絞り込みができる、断ることができる、そしてそれ故に手にするものがあるのだと思います。

さて、ここまで事業のあり方を絞り込むとさらに「愛してくれる人」が現れます。
それは社員です。
失礼な言い方ですが、リフォーム会社で働きませんか?と言われて魅力を感じる人はたくさんはいないと思います。
でも、これが「老夫婦が互いに感謝し合う幸せに満ちた生活の創造」だったらどうでしょうか?
「ひと肌脱ぎたい」と思う人は増えると思います。
顧客だけでなく働く人も心の豊かさを求めます。お金になれば何でも良いとは考えません。
豊かな心を持ちながら仕事をしたいのです。

サイコグラフィックな絞り込みをする会社には、その後素晴らしい好循環が発生します。
お客様からとても感謝をされるので社員はますますイキイキと仕事をするようになります。
上司が褒めたりすかしたりしなくてもヤル気を自家発電します。それが次の顧客満足を生みます。
そして採用にも好影響が生まれると考えています。
イキイキと仕事をする社員の姿は、何にも勝る求人広告だからです。

みんなに好かれようとすると誰にも好かれない。
特定の人にとっての価値ある存在になればい良い。

その価値を編み出すキーワードは、欲求…サイコグラフィックだと考えるのです。
どんな時代になっても人に欲望がある限り、商売は不滅です!

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください!

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