アフガニスタンで殉職された中村哲医師から、僕は経営の要諦を学んだ

アフガニスタンの永久支援に携わってきた中村哲医師が、過激派組織の襲撃によりお亡くなりになりました。
怒りやら悲しみやらで心が動揺しています。
僕は、中村さんにお会いしたことはありませんが、経営において、いや人生にとって大切なことを教えてもらいました。

今日は追悼の意を込めて中村さんから学んだことを書きたいと思います。

永久支援の意味

中村さんのアフガニスタンでの支援活動は「永久支援」と呼ばれています。
何故、永久なのか?
永久に支援を続けるという意味ではありません。
現地の人たちが持続的かつ自律的に活動できるための支援なのです。

中村さんは医師としてアフガニスタンに入りました。
治療を続ける中でもっとスケールの大きな対策の必要性に気づきました。
治療をしても再び感染症などにかかるのは水の問題があったのです。

そこで取った策が「河川を造る」というものです。
河川づくりは河川工学という専門分野があるほど難しいものです。
それをいち医師がやったのです。

日本から重機を持ってきてコンクリートで造るのが一番手っ取り早いのですが、それはしなかった。
その理由は、現地にないもので造ったら自分たちでメンテナンスできない…永久支援にならないからです。
そこで河川について調べたところ、江戸時代の「蛇籠」(じゃかご)という石を使った工事法にたどり着きました。

石が豊富なアフガニスタンならではの工法です。
現地の人たちと「一緒に」石を集め、現地との人と河川を造りました。

さらに現地の人々がメンテナンスをするために河川に沿って村をつくる必要があり、それにも着手しました。

スケールが大きいでしょ?
全ては永久支援の理念に基づいた意思決定なのです。

今あるものを活用する。皆んなと一緒につくり上げる

私たち経営者は、外部から色んなモノやコトを持ってくるのが好きだと思います。

僕が中村医師から学んだことは、ないものではなく「今あるもの」に目を向けたビジネスデザインでした。
中村医師を知る前、新聞業界は衰退期に入っていたので、まったく新しい商品・サービスを扱う必要があると信じていました。
そこで信州の名産の通販事業に乗り出しました。
結果は、僕の書籍やセミナーでおなじみの「信州銀だら事件」で大失敗をしました。

僕なりに、マーケティングや商品開発の勉強をしたつもりですが、やっぱり経営は「今あるもの」…現存する資源を活用するのがベストです。
今は、新社長のもと、新聞店のネットワークを活かした地域づくり事業をしています。

同時に、社長は社員さんと一緒につくり上げることが重要だということも中村医師から学びました。
中村医師は河川も村も現地の人たちと一緒に造りました。

完成品をポンと渡されても、それに愛着は持てませんよね。
自分が関わり苦労してつくり上げるから自分事になり永久支援になる。

計画段階から一緒に考え創ること、これが持続可能な経営の要諦だと考えます。

僕が中村医師から学んだこと。
・今あるものを活用してデザインする
・自分がいなくなっても持続する仕組みをつくる
・そのために皆んなと一緒につくり上げる

聞いた話ですが、中村医師が最初にアフガン支援ののNGOに参画した動機は、蝶が好きでアフガンには珍しい蝶がいるから、というものだったそうです。

それが何世代も語り継がれる永久支援に繋がった…

人生は偶然により道が拓けるものかもしれません。

心よりご冥福をお祈りいたします。
中村医師、あなたの功績はアフガニスタンだけでなく全人類にとっての珠玉の知恵です。

R.I.P