「管理職になりたくない病」を治す薬
ここ数年、指示ゼロ経営を学ぶ動機として「管理職の力に依存しない組織運営の実現」を掲げる企業が増えています。
日本能率協会の調査によると、若手社員の77%が「管理職になりたくない」と答えており、中には「管理職は、もはや罰ゲーム」とまで言う人もいます。
まあ、非常に難しいビジネス環境の中で、自分の仕事を持ちながらマネジメントをするなんて「無理ゲー」と言えるでしょう。
管理職の牽引力よりも、組織の自律性をエンジンにした方が、創造性、変化への対応など、多くの利点があるということで指示ゼロ経営を学ぶ企業が増えているのです。
実は、管理職の「罰ゲーム化」は今に始まったことではなく、歴史を紐解くと、1989年が転換点だったことが分かります。
同年にトヨタ自動車が「組織のフラット化」を宣言し、多くの企業が追従しました。「文鎮型組織」といって、中間管理職を置かず、トップの下にメンバーが全員フラットに並ぶ組織構造をとる企業が増えました。
意思決定の迅速化、現場の声がリニアに届くといった利点が時代に合っていたんですね。

一方で弊害も生まれました。
それは、「ある日、突然管理職になる」という受難です。
それまでは、課長代理といった汽水域的な役職がありました。いわば、管理職になるための練習期間のような立場で、上長のカバン持ちをすることで自然と管理職のイロハを学ぶことができたんですね。
組織のフラット化により、カバン持ちもしていない、教育も受けていない人が、突然管理職になるという理不尽を突きつけられるようになったのです。
経営者は「最近の若者は…」と嘆く前に、「最近の組織環境」をしっかりと認識する必要があると思います。
ちなみに「管理職になりたくない問題」は世界の中でも日本が突出しているようです。
パーソル総合研究所がアジア太平洋地域の14カ国に行った調査では、管理職への意欲が最も高かったのがインドで、なんと86%以上の人が管理職になりたいと答えました。
日本人は21%でしたが、日本人の1つ上のニュージーランドが41%なのだから、日本人だけが極端に低いことが分かります。
「管理職なりたくない問題」を受け、ようやく管理職教育に着手する企業が増えましたが、管理職の教育だけでは不完全、というよりも、より負担をかけることになるでしょう。
着手すべきは、管理職に依存しない「自律性の高い組織の育成」であり、その上で、管理職に部下と組織と関わり方を教育することです。
管理職になりたくないという声は、個人の問題ではなく、日本特有の文化と組織の構造が生み出した必然なのかもしれません。
目を向けるべきは「誰を管理職にするか?」ではなく、「管理職に依存しない組織をどうつくり、どう運用するか?」…問いの転換こそが、この問題の本質的な解決につながると考えています。
※「記事が面白かった」という方は、是非「読者登録」を!
読者優先セミナーや無料相談など、登録者限定の秘匿情報が届きます。



