「好きこそものの上手なれ」を応用し人を育てる。
「好きなことを仕事にする」という考え方がありますよね。
これに対し「好きではなく得意なことをすべし」と主張する人がいますし、さらには「夢中になれることをした方がいい」という人までいます。
どれが正しいのでしょうか。
この議論は、熟達の原則で整理することができます。
物事の熟達には、一つのことに打ち込む時間が必要です。さらに、一つのことに打ち込んだ時間とアイデアの創出にも比例関係があることも分かっています。
人は、嫌なことに時間と労力を費やすことはできません。
ということは、やはり「好きなことをする」ということが出発点になります。「好きこそものの上手なれ」と言いますしね。
好きなことをする→得意になる→夢中になれる→より好きになる…
まず、好きをつくることが熟達の好循環の第一歩と考えています。
そのための最も現実的なアプローチは「嫌いにならない工夫」だと考えています。
よほど自分の肌に合っていなければ話は別ですが、そうでなければ、続けているうちに上達し、楽しくなるものです。
そして、ある程度続けると、後には引けなくなります。
これは、行動経済学の「サンクコスト効果」に似ています。
サンクコスト効果とは、これまでに投じたお金・時間・労力を考えると「今さらやめられない」と思う心理現象を指します。
サンクコスト効果の代表は、1960年代に英仏共同で行われたコンコルドの開発です。
開発途中で、燃費の悪さや座席数の少なさから、事業を続けても採算が取れないことが明らかになりました。
しかし、すでに巨額の予算をかけてきたため「今さらやめられない」となり続行。最終的には大きな損失を出し事業終了となりました。

サンクコスト効果は、主に、引き際を誤り損失を出してしまうケースで使われますが、同じ心理が成功要因になることもあります。
好きで始めたことに、気づけば長い時間を費やしてきた。ならばトコトンやってみようという決意が生まれる可能性があるのです。
それでは、どうすれば「好き」(嫌いにならない)をつくることができるでしょうか。
その秘訣を、習い事から学ぶことができます。
スポーツでもアートでも、一流の指導者は、親が教えることを嫌います。ハッキリと「親は教えないでください」と言う指導者もいます。
経験がある方なら頷けると思いますが、親が教えると押し付けやダメ出しが多く、習い事が嫌いになってしまうんですよね。
なので、一流の指導者は、親が教えることを強く戒めるのです。
勿論、楽しいだけでは熟達しません。
苦しいことや辛いことを乗り越えて真の熟達は得られます。
それも、好きだから続けられる、はたまた「引くことは出来ない」という決意により乗り越えることができるのだと思います。
だから、人材育成は、まず「好き」をつくることから始めるのが優位ということになります。
好きになる秘訣はゲームの世界から学ぶことができます。
最近はスマホゲームが主流ですが、スマホゲームは、まずは無料でダウンロードして、ゲームが進むにつれ課金していく仕組みになっています。つまらなければ、すぐに削除されてしまいますので、何としても三日坊主は避けたい。
そこで、ゲームを始めたらできるだけ早い段階で、アイテムを入手できたり、ミニボスを倒したりと、小さな成果を得られるように設計するそうです。
指導者は、つい自分の理想と生徒の熟達度合いを比べ、足りないところにばかり目が行き、ダメ出しをしてしまいますが、評価軸を自分ではなく相手に置き、小さな成長を本人が実感できるようにプログラムすることが欠かせません。
最初から能力を引き出そうとするより、まずは本人が少しずつ仕事を好きになれる環境を整える。
それが「好きこそものの上手なれ」の実務だと考えています。
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