理想が高い社長が陥る人材育成の典型的な失敗

高い理想を持つことは非常に大切なことですが、こと人材育成に関しては裏目に出ることがあります。
これってすごく多い。
理想と現実のギャップは行動の原動力になりますが、その使い方には注意が必要だと考えています。
今日は、理想の高さが人材育成の妨げになる理由と、その対策について考えたいと思います。

社員は社長が思った通りの人に育つ

人は理想を掲げると、何がなんでも実現したくなる生き物ですよね。
ただそれは「自分に関すること」にとどめておくのが良いと思います。
どういうことか?
人材育成の場合、社員への不満や怒りに変わる危険性があるからです。
よくある典型的なケースはこう。
理想の人材像を掲げる→現状とのギャップを不満に思う→その不満が社員に向く
あるあるです。
社長は「もっと育って欲しい」と願うのですが、その意図はまったく違ったニュアンスで社員に伝わります。
「お前らはダメだ」というニュアンスです。
言葉ではそうは言っていない、でも事実上、その解釈が起きるのです。
で、それが現実化する。

これを心理学では「ピグマリオン効果」と言うそうです。
こんな実験が行われました。
ある学校に新任の先生が赴任した時に、その先生に予め「クラスのA君とB君は天才児だ」と伝えました。
でも、実は、その2人は手に負えないほど勉強ができない子たち。
先生はそうとは知らず、天才児だと思い込み接するわけです。
すると、その子たちの成績が劇的に伸びたそうです。

「思った通りの人になる」

逆もあります。
理想が高いが故に、今の社員への不満が生まれ「ダメだ」と思うと、思った通りの社員が育つわけです。

だから僕は「他人への理想、期待」は持たない方が良いと考えるのです。

他人は変えられないけど、自分の視点は変えることができる

そもそも不満は比較から生まれます。
理想と現実の比較
A社員とB社員の比較
他社の社員と自社の社員の比較…
そして「もっともっと」と思い、損なピグマリオン効果が発動する。
こうして社長も社員も「自分たちはダメだ」という思い込みが生まれます。

自分のことをダメだと思っている人は、それに相応しい行動をします。
で、それを見た社長は任せることができなくなります。
任せない=不信頼のメッセージを伝えることになりますので、さらにダメになっていく…
すごく怖い悪循環ですよね?

その悪循環から抜け出すには、取りも直さず比較をやめること、期待をしないことだと考えます。
期待はすごく質が悪い感情です。
勝手に期待して、勝手に裏切られたと思い、勝手に嫌な気持ちになるんだもん。

この悪循環から抜け出すには「無いもの」ではなく「有るもの」に目を向けることだと思います。

僕は様々な企業の社内研修をさせていただいていますが、社長が言う「アイツはダメだ」という言葉を信じていません。
僕が客観的に観ると、ダメなやつではなく、社長の目にダメな部分が映っているだけってことが多いのです。
そして、そのダメな部分は「何かとの比較」で生まれている。
すると社内中、無いものだらけと思い込むようになってしまいます。

社長がこの状態になると、社員に注意を与える毎日になります。
「ダメを修正する」という、互いにとって不毛な労働です。

人材がよく育っている会社の社長は「ウチの社員は凄い」と言います。
これも僕が客観的に観ると、凄いのではなく「社長の目に個々の凄い部分が映っている」ということです。
だから有るものを活かすようになります。
「活かしてたくらむ」という創造的なワークになります。

これがさらなる自信を呼びます。
社長に押し付けられた理想ではなく、自分たちで掲げた理想を持ちます。

もし人材育成の理想と現実のギャップに苦しんでいたら、第三者の客観的な目を借りることをお勧めします。
「言うほどダメじゃないよ」って話になるから。

社員は社長が思った通りの人になる…他人は変えられないけど、自分の視点は変えることができますからね。

それでは今日も素敵な1日をお過ごし下さい。

【現在受付中のセミナー】

■【残席2名】実際に「見て」「学ぶ」指示ゼロ経営 特別ショートセミナー
実際に30人ほどの集団が自律型組織になる場面を見て、その後に指示ゼロ経営成立要件を学ぶ希少なセミナーです。
1年に1回の開催です。
詳細はこちら
https://www.shijizero.jp/archives/5809

■自発性と創造性が高まる賃金・賞与の決め方セミナー
ワークを通じて、賃金が増えた喜びや、評価に納得しないといった体験をしながら最適な賃金制度を学ぶセミナーです。
昇給や賞与を計算するデータ資料が参加特典でつきます。
5月17日(木) 大阪開催はコチラ
https://www.shijizero.jp/archives/5818