部下に任せた結果、業績向上。社長は未来を創る仕事ができるようになった

部下に任せたいと思っても、それが専門的な知識や技術であればあるほど、躊躇すると思います。
自分が苦労して獲得してきたもの、失敗を繰り返しながらだから、果たして習得できるのかと疑ってしまうこともあると思います。

勿論、自分だけの技術にして、自分の代で商売を終わりにするのであれば、その選択もOKだと思います。

今日の記事は、匠の技術を部下に継承し業績向上に成功した社長の事例から学びたいと思います。

高度な職人技を部下に任せるという重大な決断をした社長

その会社は長野県塩尻市にある、株式会社三泰(古畑 裕也社長)です。
創業が大正9年の老舗企業です。
間もなく創業100年を迎えます。

同社は古畑漆器店という漆塗りのお店から始まりました。
古畑 裕也社長の祖父の代に、その技術を応用しギターの塗装事業に乗り出しました。
ギターの塗装には芸術性が求められます。
また、塗るという点で漆塗りの経験が応用できたからです。

見る角度で模様が変わったり、使い込むと味が出る塗装

依頼主も多様で、規格品の受注から、こだわりの注文まで様々です。
こだわりの注文が凄いんです。
アーティストからの要望や、音楽雑誌に載っていたカラーを再現して欲しい、など難しい注文が来るそうです。

その実現を支えているのが、依頼主へのヒヤリングと同社独自の技術です。
これまでは、その多くを古畑社長がやっていました。

僕が古畑社長と出会ったのは、地元で行われた指示ゼロ経営セミナーでした。
そこで「任せる」決断をしたそうです。

とても勇気が要る決断だったと思います。

部下同士の学び合いで技術力がグングン向上した

僕は同社にお邪魔してヒヤリングを行いました。
聴いているうちに、移譲に成功した要因が観えてきました。

学び合う風土

まずは、社内の風土です。よく、職人の世界は「見て盗め」という育成が多いと思います。
それはそれで良い部分もありますが、同社には20人ほどの職人さんがいますが、一番できる職人の技術をみんなで学び合う風土があります。

ある分野に関してはAさん、違う分野に関してはBさんと、社長が知らないところでも学び合いが起きているそうです。
学び合いの効果は絶大です。
社長が5人の部下を指導した場合(従来のヒエラルキー組織)では学びの数は5です。
学び合いをした場合、部下が5人いれば、その数は「n(n−1)」になります。(nは部下の人数)
部下が5人いた場合、5×(5−1)=20の学びのチャンスが生まれるわけです。

技術は顧客のためにあるという思想

職人の世界でよく見られるのが、顧客を無視した独りよがりの提案です。
例えば、以前に理容室の経営者から聞いた話があります。
その方は、以前は技術中心の考え方を持っていました。素人には分からない、カットした時の曲線(R)を誇りに思っていたそうです。
しかし、顧客は、例えば「カッコよくなりたい」とか「清潔感があるようにしたい」といった事が望みなわけです。
その望みに応えるために技術がある。

古畑社長は、前職で営業をやっていた経験があり、技術は顧客のためにあることを痛感していました。
だから、部下には技術だけでなく、顧客の注文の背景にある思いや欲求を共有するようにしているそうです。

部下が育つ、リーダーのマインドとは?

職人さんは顧客の真の望みを知り、それを実現する技術を学び合いで習得しています。
これなら任せられますよね?

任せた結果、こだわりの注文を多く受注できるようになりました。
こうした受注は単価、利幅ともに高いので業績への好影響が大きい。
さらに、職人さんが誇りを持てるようになったと言います。

古畑社長は「青春を感じる役職」という表現をされていましたが、役職とは「あの依頼主担当」という意味で、その期待に応えた悦びを青春と呼んでいるのだと思います。

職人さんからは普通の報連相ではないと言います。
報連相の多くは仲間同士で行います。
社長に来るのは、事後報告という名の「自慢話」だそうです。
自分の仕事を社長に自慢したくて、土日でも電話がかかって来るそうです。

指示ゼロ経営になった会社でよくあるコミュニケーションです。

さらに、現場から離れることができた社長は、新たな分野への挑戦をたくらんでいます。
例えば、同社の技術の特徴は「味が出る塗装」です。
ギター以外にも、使うほどに味が出て欲しいアイテムってあると思います。
長く使うことを前提とした本物、そんな商品開発に時間もエネルギーも費やせるようになったと言います。

さて、話は戻りますが、同社が指示ゼロ経営に成功した真の理由があると僕は気付きました。

それは、古畑社長の言葉に全てが表れています。

「今では、職人さんの方が上手なんだよね」…これを「嬉しいそうに」語るのです。
部下の成長を心から悦ぶことができる、これが指示ゼロリーダーの最大の資質だと思います。

古畑社長の話を聞いて、一番心に残ったのは、その満面の笑みでした。

部下の成長、成功を心から喜べるマインド…これがあるから任せられるのだと思ったのです。

それでは今日も素敵な1日を!

 


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米澤 晋也

米澤 晋也

1971年長野県生まれ。株式会社Tao and Knowledge代表 株式会社たくらみ屋代表 一般社団法人夢新聞協会理事長。
指示・命令をしなくても自分たちで課題を発見し行動できる組織「指示ゼロ経営」を提唱する。
1人1人が自由に行動し、創造性を発揮しながらも調和する、Jazzのジャムセッションのような組織です。
特に2代目、3代目経営者が自分の組織を創るための実務を得意としています。
著書に「リーダーが『何もしない』とうまくいく」がある。

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