部下から「上司のおかげです」と言われたら育成に失敗したと考える

人は認められたい生き物です。他人からの承認は大切ですが、だからといって「認めてあげる」という発想は危険だと考えています。
なんだか相手を子ども扱いしていると感じるのです。
子ども扱いすると子どもが育ちます。一人前に育って欲しいと願うなら大人扱いをすることだと考えるのです。
かと言って承認が不要というわけではありません。
承認のあり方が大切だと思います。

今日は社員が成長する社長はどんな心構えでいればよいかを考えます。

社長の役割は「ひとしごと」の場をつくること

人は自らの中に向上意欲が芽生えた時に成長します。
その向上意欲はどこから生まれるのでしょうか?それは「自らの行動で引き起こした変化」だと考えます。
人は自ら考え判断し決め行動した結果(変化)を自分で確認、振り返り次に活かすことで成長します。この一連のプロセスを「ひとしごと」と言います。

変化は客観的なものが理想です。自分の行動を上司が褒めてくれたというのも変化だとは思いますが、それは他律的です。
プロの芸人は舞台での観客の反応を気にします。反応が薄かった時に上司(?)から「ウケなかったけど頑張ったね」なんて言われても嬉しくありません。むしろ気持ち悪いと感じると思います。

社長の役割は「ひとしごと」の場をつくることだと考えています。

例えば、僕はここ1年の間に小学生からそれを気付かせてもらいました。
僕のブログでたびたに紹介する柳沢匠飛(タクト)です。


彼は経営をゲームで学ぶ「MG研修」にハマっています。MGでは資本金300から事業を興します。設定は製造業で機械を買い人を雇い、材料購入から販売までを「自分の判断で」行います。
結果は本格的な決算書をつくり評価します。

このゲームの素晴らしいところは人の成長に必要な基礎が埋め込まれていることです。
自ら考え判断し決め行動した結果(客観的な情報)を自分で確認、振り返り次に活かすようにできているのです。
MGでは子どもと言えども一人前の社長として扱われます。「こうした方が良いよ」というアドバイスは誰からももらえません。
一見不親切のように見えますが「ひとしごと」を繰り返す中で成長していくのです。

他人から評価もされません。講師からも。
そんなものは不要なのです。評価は他人からではなく「客観的な結果」がしてくれるから。
褒めて伸ばす、良いところを引き出すといった発想とは次元が違うのです。

社長は「ひとしごと」をやったことに敬意を払うこと

僕はこの1年間で「人の成長」に関して大きな学びを得ました。
タクトの親も僕も、彼の成長の「場」をつくっているだけだと気付いたのです。
「場」とはMGを開催することです。
場の中に成長に必要なすべて埋め込まれているからです。
最近では僕はタクトを子ども扱いしません。
例えば、タクトが決算の数字が合わずに困っていたとします。(これがしょっちゅう合わないのです…)
困っていても「大丈夫か?」と声はかけません。その理由は人から声をかけられなくても自分で助けを求めれば良いからです。
助けを求められた時は全力で応援します。
この経験でタクトの行動は変わりました。「子どもだから助けてもらって当然」という意識がないから、逆に困っている大人がいたら助けるのです。

タクトの成長を支えているのは「ひとしごと」の効果だけではありません。
ライバルの存在も大きいのです。
タクトと同じ年に蜂谷蒼大(そうた)君というライバルがいます。
タクトは蒼大君に会ったのは2回だけですが、風の便りできく蒼大の活躍をいつも気にしています。
タクトは「蒼大社長」と呼んでいます。
事情を知らない大人が聞いたら不思議に思いますよね? 笑

ライバルの存在も「客観的な情報」です。「蒼大君がこんな数字を出した」という情報だけで親も講師もそれ以上のことを言う必要がないのです。

よく「◯◯君がテストで100点を取ったんだってよ。あんたも頑張らなきゃ」と言う親がいますが、子どもの成長には逆効果です。「あんたも頑張らなきゃ」が余計なのです。

ライバルから受けた刺激によって頑張り結果を出したら、結果を出したことではなく「ひとしごと」をやったことに敬意を払うことだと思います。

これが上司の役割、自律的に成長する承認だと思うのです。

ひとしごと任せること。
それをやったことに敬意を払うこと。

上司の力ではなく自らつくり出した変化で成長することが大切だと考えています。
そういう意味で部下から「上司のおかげで」と言われたら育成に失敗したと考えるのです。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください!

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